仏政府がユーテルサット社に増資、欧州独自の衛星通信網を目指す
フランスの衛星通信企業ユーテルサット(Eutelsat)社が、大規模な増資を受けることが明らかになった。総額は13億5,000万ユーロ(約2,295億円)に上り、フランス政府を筆頭とする現在の大株主が出資元となる。増資を主導したフランス政府は、世界最高レベルの通信網の展開を目指しており、宇宙を巡る勢力図に変化を加えようとしている。 ユーテルサットは、衛星通信を主要事業とするフランス企業である。米国や中国の巨大衛星企業…

フランスの衛星通信企業ユーテルサット(Eutelsat)社が、大規模な増資を受けることが明らかになった。総額は13億5,000万ユーロ(約2,295億円)に上り、フランス政府を筆頭とする現在の大株主が出資元となる。増資を主導したフランス政府は、世界最高レベルの通信網の展開を目指しており、宇宙を巡る勢力図に変化を加えようとしている。 ユーテルサットは、衛星通信を主要事業とするフランス企業である。米国や中国の巨大衛星企業…
米国国家地理空間情報局、通称NGA(National Geospatial-Intelligence Agency)は米戦闘司令部(COCOMS:US Combatant Commands)と協力し、衛星画像を主体とした画像情報の送受信を可能にする「J-REN」システムの運用テストを行っているという。 J-REN(Joint Regional Edge Node)は、NGAが開発を進めているメッシュ構造のネットワークであり、その目的は衛星画像を主体とした情報を前線部隊の指揮官の要求に対しても迅速に提供…
トランプ政権が公表した「予算教書」を受け、米航空宇宙局(NASA)は、国際月探査プロジェクト「アルテミス計画」で開発中の大型ロケットや宇宙船の運用を将来的には終了させ、民間の打ち上げサービスに切り替えるという大幅な変更方針を明らかにした。 そもそもアルテミス計画をめぐっては、これまでトラブルにより度重なる遅延が発生しており、計画の改善を求める声も上がっていた。 初の有人飛行ミッションであるアルテミス2…
米宇宙軍は衛星への給油技術(軌道上給油)の開発を進めているが、費用対効果の高さに懐疑的な声も多く、プロジェクト見直しが示唆されている。とりわけ国防総省の予算削減が政府内で議論されている中、コストカットの対象となる可能性も浮上する。 この軌道上給油は、衛星の寿命を延ばし取替コストなどを削減することが期待されており、現行の計画では、5年間で2,000万ドル(約29億円)の予算が計上されている。主要サプライヤー…
中国は月面探査ミッションにおいて、月軌道上からレーザーを用いて電力を供給することを検討している。この技術が実用化すれば、太陽光が当たらない時間帯、あるいは常に影になる場所での活動が可能となる。 月面で電力を確保する上でまず考えられる方法は太陽光発電であるが、夜間やクレーター内部などの日光のまったく当たらない「永久影」のエリアでは、太陽光発電を行うことができない。月面は夜間(太陽光の当たらない時間)…
インドは2025年の1年間で10回の衛星打ち上げを計画している。同国は米中など宇宙大国に肩を並べることを目指しており、今年はインドにおいて宇宙産業の急成長がみられる年となるかもしれない。 インドは宇宙能力を世界トップレベルとする野心的な目標を掲げている。旧ソ連、米国、中国に次ぐ有人宇宙飛行能力の獲得を目指しており、さらには2035年までの宇宙ステーション建設、2040年までの有人月面着陸を目標として公言。2025年…
米国のスペースX社は、2024年12月にGPS衛星の迅速発射プログラムを成功させたが、2025年5月末までに次なる打ち上げも行う予定だという[1]。このプログラムにより、米国のGPS衛星のレジリエンスが高まることが期待されている。 このプログラムは「迅速対応トレイルブレイザー(Rapid Response Trailblazer)」と呼ばれ、GPS衛星の打ち上げまでにかかる時間を短縮するための試験である。通常は指令から24か月程度かかるとされるGPS…
宇宙空間における宇宙ゴミ(スペースデブリ)の脅威が一層高まりつつある。最近も使用済み衛星の破損事故が発生しており、大量の破片が軌道上に飛散している。欧州宇宙機関(ESA)も4月1日に発表した報告書で、「スペースデブリの蓄積を早急に抑制しなければ、地球周辺の領域が過密状態になり、特定の軌道が利用できなくなる可能性」を指摘している[1]。 昨年12月には、実際に、退役し軌道上にとどまっていた米国の衛星「DMSP-5D2…
2025年2月18日、内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、同2月13日に準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)「みちびき6号機」が赤道上空にある静止軌道への投入に成功したと発表した。 この衛星は、2月2日に種子島宇宙センターから国産H3ロケット5号機で打ち上げられたものであり、4回におよぶ軌道修正を経て高度約36,000km、東経90.5度の予定位置に到達した。 準天頂衛星システム「みちびき」「みちびき」は日本…
宇宙開発を巡り、米中の競争はますます激化している。米国では主に陸軍向けの衛星ネットワーク強化が進められており、戦闘能力を備えた衛星の開発も計画中だ。一方で中国は、2024年末にメガコンステレーション衛星の第2群の配備を開始させ、通信能力やセンシング能力のさらなる強化を進めている。 米国によるC2衛星の導入とその戦闘能力米国では主に陸軍のネットワーク強化を目的として、NGC2(Next Generation Command and Contr…
米宇宙軍の宇宙領域把握(SDA: Space Domain Awareness)は、さらなる能力向上へと進んでいる。直近の具体的な動きとして、宇宙軍と米アンドゥリル(Anduril)社は、衛星軌道の安全を監視するネットワークシステムの更新のため、1億ドル(約156億円)の契約を結んだという。また世界有数のシンクタンクである米ランド研究所は膨大な宇宙データを分析するためのAIシステムの構築に成功したとのことだ。 これらの背景にあるのは、運…
ノースロップ・グラマン社とボーイング社が競争開発している対妨害通信装置試作モデル「PTS-P」(Protected Tactical SATCOM-Prototype)は、2基とも2025年に打ち上げが予定されている。この衛星は、電子妨害に対して高い耐性と安全性を備え、次世代の戦術通信ネットワークの中核を担うことが期待されている。 2025年1月6日、ノースロップ・グラマン社はPTS-Pの組み立てと試験の完了を発表した。同社は現在、ESPAStarバス[1]にミ…
米航空機メーカー大手ノースロップ・グラマン社は2025年4月2日、米宇宙軍(USSF)と宇宙空間で燃料補給を行う技術実証を含めた2件の契約を交わしたと発表した。これらの契約は同社が持つ「軌道上での衛星修理技術」と、「革新的な給油技術」を技術基盤としており、静止軌道[1]上にある官民の衛星を守ることが期待されている。また、これらの技術基盤には「mission extension services(任務延長サービス)」と呼ばれる、燃料が尽き…
宇宙インフラ技術を専門とする新興企業グラビティクス(Gravitics)社は3月26日、米宇宙軍のイノベーション部門であるSpaceWERXによる「戦略的資金増額(STRATFI:Strategic Funding Increase)」プログラムの資金提供対象に選定されたと発表した。 この選定により、同社は政府資金、中小企業技術革新研究(SBIR:Small Business Innovation Research)プログラム資金、民間資金を含め、最大6,000万ドル(約88億円)の資金を調達…
フランスのエアバス(Airbus)社は2月10日、英国防省と人工衛星「オベロン(Oberon)」の設計・製造に関する契約を締結したと発表。契約規模は1億2,700ポンド(約241億3,000万円)にのぼり、納入は2027年になる予定だ。 製造されるオベロンは2基。オベロンは超高解像度の合成開口レーダー[1]により、天候や昼夜を問わない情報収集・監視・偵察(ISR)能力を有する。英国はISR能力を米国に依存していたが、オベロンを通じて独…
宇宙での開発競争が激化する中、米宇宙軍は宇宙関連の技術やノウハウなどの「宇宙アセット(資産)」を高度化させるとの意図を明確にしはじめた。とりわけ、衛星コンステレーションや宇宙空間で修理可能な衛星といったコンセプトは、宇宙アセットの構成を根底から見直すものであるが、以下、今後の宇宙競争を展望するうえで着目すべき変化をいくつか取り上げたい。 <衛星コンステレーション:一層の小型化とコストダウン>衛星コ…
米宇宙軍は、ボーイング(Boeing)社の子会社であるミレニアム・スペース・システムズ(Millenium Space Systems)社とミサイル追跡監視衛星(Missile Track Custody Satellite)の新たな契約を締結した。衛星6基で計3億8,600万ドル(約594億4,400万円)の契約で、2027年後半までの納入が予定されている。 ミサイル追跡監視衛星は、軌道上からミサイルの発射を検知し、追跡することを目的とした衛星だ。この衛星は、低軌道と静止…
遠く離れたところから、対象物に触れずに対象物の形や性質を測定する技術である「商用リモートセンシング技術」の分野において、米国と中国は激しい競争を繰り広げている。今年10月に米戦略国際問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)から公表されたレポート「ゴールドラッシュ:2024年の商用リモートセンシング世界ランキング(Gold Rush: The 2024 Commercial Remote Sensing Global Ranking)」…
米インバージョン・スペース(Inversion Space)社は、宇宙から貨物を輸送する軌道貨物・再突入カプセル[1]の開発を進めるため、4,400万ドル(約68億円)を調達したと発表した。 ロサンゼルスを拠点とする同社は11月20日、スパーク・キャピタル(Spark Capital)社とアジャセント(Adjacent)社が主導する資金調達ラウンド『シリーズA[2]』で、調達に成功したと発表。このラウンドにはロッキード・マーティン(Lockheed Marti…
米国では、宇宙における軍民の協力が課題となっている。今や軍は民間の力なくして技術開発や任務の遂行をおこなえず、両者の協力は一層進みつつある。しかし、協力を進めるうえで解消すべき課題は多く、またセキュリティクリアランス等の問題から、民間企業の軍事部門への関与が増大することへの懸念もある。 宇宙領域での競争は近年激しさを増しており、米国は圧倒的な優位性を失い、中国など他国の追随を許している。激しい技術…