海洋研究開発機構(JAMSTEC)と新明和工業は6月9日、海中で活動する水中小型ビークル「HSV」と海上の無人飛行艇「XU-M Ⅱ」を組み合わせた海洋調査システム「海空無人機」の実現に向けた実証試験に成功したと発表した。背景には、日本の広大な排他的経済水域(EEZ)での資源探査、海洋モニタリング、災害時の情報収集、海底捜索への需要がある。
今後さらに技術を向上させて海域試験を実施するとともに、2033年度にはさらに大型化したAUVを搭載した実証システムで、片道370kmの航続距離や水深2000mの調査を目指す。
試験は今年4月9日、兵庫県阪神港の芦屋沖で実施された。
従来の海洋調査は、自律型無人探査機(AUV)を大型の有人船舶で調査海域まで運ぶ必要があり、移動時間や運搬費用、人員の負担が大きかった。さらに、危険海域では有人船の投入が難しく、機動性の制約から広大な排他的経済水域(EEZ)を早く安全に調査するには問題があった。こうした制約を補完し、代替する手段として海空無人機の開発が求められてきた。
今回試験した海空無人機システムは、無人飛行艇でAUVなどの水中探査機を調査海域まで運搬し、調査後にはデータや機体を回収して帰還する構想だ。報道によると、海空無人機の実用化で、危険海域での調査や広大な海域の迅速な観測が可能になり、費用も従来の数分の1程度まで削減できる可能性があるという。
政府の経済安全保障政策では、海洋情報を安全に素早く取得する技術が重要視されてきた。今回の海空無人機の開発は、内閣府が主導する経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)の一環。
1機で空と水中を行き来することができるドローンは存在するが、海と空を組み合わせ、音響通信を使った海洋調査システムは他国に例がない。構想から搭載技術までを日本国内で開発した点も重要だ。
実証試験では、潜航中のHSVが水深約15mの海底近くで位置や方位、高度を保ちながら撮影した海底画像や機体情報を、音響通信で洋上のXU-M Ⅱへリアルタイムに送信することに成功した。XU-M Ⅱの自動飛行と自動着水も実証され、海と空の無人機を連動させた海洋調査の実現に向けた重要な一歩となった。

小規模試作システムによる海域試験イメージ
【出典】海洋研究開発機構HP
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20260609/
今後は、波浪環境下での安定した自動離着水やAUVの自動投入と揚収、複数無人機の統合運用などの技術開発を進める予定。
JAMSTECによれば、2028年度に要素技術を統合した小規模試作システムで海域試験を行い、2033年度には全長約17.5mの無人飛行艇に全長約4mのAUVを搭載する実証システムで、片道200海里(約370km)の航続距離や水深2000mの調査を目指すとしている。
【出典】
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20260609/