軍事費と開発アジェンダ―国連事務総長レポートの概観
在米国連ウォッチャー 1 初めに2025年11月、ブラジルで第30回気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が開かれた。化石燃料からの完全な脱却までは合意し得なかったものの、先進国から途上国への支援を増やすという点においては合意がなされた[1]。気候変動は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の重要な一部でもあるが、米国のトランプ大統領が気候変動に懐疑的なことや、世界的に内向き志向が強まる中、国際的な課題に共…
在米国連ウォッチャー 1 初めに2025年11月、ブラジルで第30回気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が開かれた。化石燃料からの完全な脱却までは合意し得なかったものの、先進国から途上国への支援を増やすという点においては合意がなされた[1]。気候変動は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の重要な一部でもあるが、米国のトランプ大統領が気候変動に懐疑的なことや、世界的に内向き志向が強まる中、国際的な課題に共…
在米国連ウォッチャー 3 国連対テロリズム戦略、タスクフォース、対テロセンターの発展-国連総会一方で、安保理の動きと並行して、国連総会でも対テロのための措置は取られていた。2005年には、当時のアナン事務総長のイニシアチブでテロ対策実施タスクフォース(Counter-Terrorism Implementation Task Force: CTITF)が事務局内に設置され、後に政務局に編入された[1]。このタスクフォースは、多岐にわたる国連組織の中でテ…
在米国連ウォッチャー 1 初めに前回の記事では、まさに現在起こっている国連の大改革について概観した。大きくは予算や人員の削減、マンデートの見直しと重複の削減、効率化のための機関の統廃合などがその中身であるということが理解頂けたと思う。しかし、グテレス事務総長の改革に向けた取り組みとは裏腹に、この組織統廃合やマンデートの見直しは非常に難しいと言わざるを得ないだろう。なぜならば、国連はそもそも効率的に…
1 初めに2025年は、現代史の大きな出来事から80年という節目を迎える。第二次世界大戦の終結から80年であり、人類史上最初で最後の核兵器の使用から80年でもあり、そして国際連合が成立してから80年でもある。国連の前身である國際聯盟は第一次世界大戦後成立したが、第二次世界大戦の勃発とともにその機能を停止した。実にその活動は約20年程度しかなかったのである。それを鑑みると、国際連合がその4倍もの長きにわたって世界…
在米国連ウォッチャー 4 新たなリスクと安保理決議1540への教訓(1) データからの教訓非国家主体と大量破壊兵器に関する上記のデータや事例からは、以下の考察ができるだろう。 第一に、アルカイダがオウム真理教から学んだように、CBRN兵器の取得および使用を含む成功事例は、他の非国家主体を勢いづけ、さらなる事件の発生につながる可能性があるという点である。一方で、未然防止やCBRN兵器の使用による物理的被害が限定…
在米国連ウォッチャー 1 初めに大国間競争の時代が戻ってきたと言われるようになって久しい。米中の戦略的競争は言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵攻はNATOとロシアの対立が冷戦の遺物でないことを世界に見せつけている。米中露は核兵器を持っているため核抑止が働くという見方もある一方で、中国の核軍拡、ロシアの核による威嚇、米国のトランプ大統領による予断を許さない外交などにより、今後大国間の核戦争が勃発する可…
在米国連ウォッチャー 3 核抑止からの脱却は可能か人道的アプローチの延長線上として、核兵器禁止条約は核の使用や威嚇を禁じているので、当然に核抑止も否定していることになる。なぜなら核抑止は核の威嚇に基づくものに他ならないからである。今回の第3回締約国会議では、核兵器は非人道的だという人道的アプローチに基づく主張に加え、安全保障の観点からも核抑止に頼らない方が良い、とする主張も目立った。特にNGOの代表や…
在米国連ウォッチャー 1 初めに本年3月3日から7日にかけて、ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons: TPNW)の第3回目となる締約国会議が開かれた。第1回目は2022年6月、第2回目は2023年11月に開催されており、約1年半ぶりの締約国会議となる。この条約はその名が示す通り核兵器を禁止するための条約であり、それがため、9か国の核保有国や、日本を含むその同盟国は参加してい…
在米国連ウォッチャー 3 公開作業部会(OEWG)レポートの概観2025年1月現在、OEWGの会合は9回行われている。これらの議論は過去の議論を基にして行われているものであるので、3つのOEWGのレポートを確認することで、議論の発展の様子や現在地を知ることができるだろう。 (1) 2022年レポート[1]OEWGレポートの主要部分は、〇現存する或いは予見される脅威(Existing and Potential Threats)〇責任ある振る舞いに関するルール・…
在米国連ウォッチャー 1 初めに安全保障は現在なお物理的な領域が主戦場であるとはいえ、サイバー空間の占める重要性がますます高まっていることに反対する人はいないだろう。サイバー技術が社会経済の発展に大きな可能性をもたらす一方で、安全保障への直接的な脅威となり得ることが認識されて久しい。前回の記事でも触れた通り、昨年9月に国連本部で開催された国連未来サミットの成果文書である「未来のための協定(Pact for t…
在米国連ウォッチャー 1 初めに本年9月22日から23日にかけて、各国首脳らが参加する国連総会の一般討論演説に先立ち、国連未来サミット(Summit of the Future)がニューヨークの国連本部にて開催された。このサミットの目的は、よりよい未来を創るために現在の各種コミットメントを達成する努力を加速すること、そして新たな危機に対処し、新たに生まれた好機を活用することとされる[1]。特にこのサミットやここで採択された…
在米国連ウォッチャー 1 初めに2024年9月下旬、国内では自民党総裁選が行われる中、岸田首相は米国に出発した。バイデン大統領の地元であるデラウエア州で行われる日米豪印(クアッド)首脳会談に加え、ニューヨーク市の国連本部で開催される国連未来サミット、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズのハイレベル会合への出席のためである。岸田首相は、その後に続く国連総会の一般討論演説へは出席しないが、未来…
国連は機能不全なのか?(その2)在米国連ウォッチャー 1 初めに国連は機能不全なのかという問題提起から、前回の記事では主に事務局と国連における財政状況の悪化の関係を取り上げた。そして、直接的に国連が機能不全であるかを測ることは難しいものの、国連の屋台骨を支える事務局が十分に機能し得る態勢にないことを紹介し、事務局が機能不全であるとすれば、その大きな責任は加盟国にあることを示した。引き続き本稿では、…
国連は機能不全なのか?(その1)在米国連ウォッチャー 1 はじめに近頃、国連は機能不全に陥っているという言説をよく見かけるように思う[i]。確かにロシアによるウクライナ侵略やガザでのイスラエルの軍事作戦を見ると、国連があっても停戦に向けた取り組みができておらず、そのため国連は機能不全であるという主張も、根拠のないものではない。一方、国連が機能不全と言うとき、その「国連」という言葉が何を指すのか漠然と…
国連における人権の保障とイスラエル在米国連ウォッチャー H.S.1 はじめに2023年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃し、多数の死者を出したことは記憶に新しい。その後イスラエルはガザ地区において迅速な反撃に出て、凄惨な状況が続いていることも日々ニュースで目にする通りである。イスラエルが10月7日に攻撃を受けたとはいえ、その後のイスラエルの対応は国際社会の非難を招き、国連安全保障理事会でもしばしば議論の的とな…
在米国連ウォッチャー 1 はじめに本年2月中旬、米国が独自のインテリジェンスに基づき、ロシアが対衛星兵器として宇宙に核兵器を配備する能力を開発中であると発表した。プーチン大統領はこれを否定しており、また米国も未だ配備された訳ではないと明言しているが、もし実際に使用された場合、核爆発で発生する電磁パルス(EMP)により、多数の衛星が機能不全になることが懸念されている[i]。実際、宇宙での核爆発自体は新し…