ウクライナとイスラエルは最近、敵対国によるドローンの効果的な運用により、それぞれの戦場で困難に直面している。ロシア軍の攻撃及び偵察用ドローンは、ウクライナ軍の反攻作戦を阻止する上で重要な役割を果たしている。2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃でもドローンが使用された。報道ではドローンの戦果が焦点となっているが、一方でドローン対策の限界も指摘されている。
ウクライナやイスラエルを含むほとんどの軍は、現在ドローン対策に多額の投資を行っている。最新のレーダーやセンサーを備えた地対空ミサイルや機関砲は、主に大型ドローンに対し効果的だ。しかし、低空を飛行する小型ドローンに対しては探知や撃墜が難しい事が課題となっている。このため、多くの国が小型ドローンに対抗するための専用システムを開発しているのだ。
<ドローン対策システムの分類>
ドローンへの対処法は、一般的に「物理破壊型(キネティック)」と「非物理破壊型(非キネティック)」の二つに分類される。
物理破壊型は、弾丸やミサイルなどを使ってドローンを攻撃する方法だ。ほとんどの物理破壊型は、捕捉レーダーと射撃精度向上のための統制装置が連動している。
一方で非物理破壊型は、ドローンの飛行に不可欠な信号回路を遮断することでドローンを妨害する。いわゆるジャミングと呼ばれる行為だ。これらのシステムでは、ドローンの制御信号に妨害波(ノイズ)を発射する。その結果、ドローンは制御信号を検出できなくなり、墜落(または着地)するという仕組みだ。さらに一部の非物理破壊型は、偽のGPS信号を送信することで、事前にプログラムされた自律飛行を中断させる方式も採用している。
ロシア軍がドローンを頻繁に使用しているため、ウクライナへの武器支援には多くの対ドローン装備が含まれる。例えば、米国からは「車載式対空砲、レーザー誘導システム、迎撃用ドローン」などが提供されている。さらにウクライナ兵士の画像には、「対ドローンライフル」が写っているものがあるが、これはドローンの航行を妨害する指向性パルスを発射する非物理破壊型である。
イスラエルでは、ラファエル社が「ドローン・ドーム」、エルビット社が「Re Drone」と呼ばれる非物理破壊型の対ドローンシステムを開発している。これらのシステムは、3Dレーダーや信号分析器、高性能カメラでドローンを検知し、ノイズ信号を発信してドローンを妨害する。ドローン・ドームとRe Droneは、重要なインフラをドローン攻撃から防護するため多くの国で採用されており、民生用ドローンの対処には効果的とされている。
<対ドローンシステムの限界>
しかし、軍用ドローンに対する信号妨害は効果がない場合も多い。例えば、ロシア軍が多用する小型ドローン「Orlan-10」は、ジャミングに効果のない自律飛行モードを備えている。また、ウクライナ軍がドローンに対して物理破壊型を使用する際、ロシアの電子戦部隊は物理破壊型が使用するレーダー波を標定して、正確なカウンター砲撃を実施している。このため、ドローンに対抗することは非常に困難となっているのだ。
10月7日のイスラエル攻撃では、ハマスが組織的にドローンを運用している。彼らは市販のドローンを改造し、爆発物を搭載してイスラエルの防衛線を攻撃した。これらのドローンは低空飛行が可能で、レーダーに探知されにくい。さらに、電子妨害に対抗するため周波数が変更されているという。ハマスのドローン攻撃は主に都市部で行われ、建造物による視界の遮断がドローンの迎撃を更に困難にした。
ウクライナとイスラエルが直面しているドローン対策は技術的な限界を浮き彫りにした。急速なドローン技術の進化に対して、軍が開発する対ドローン技術は追いついていない。ウクライナとイスラエルのドローン攻撃が示すように、現在のドローン対策技術はドローン攻撃を完全に抑止できるレベルには達していないのが実情である。
【参考】
https://www.forbes.com/sites/vikrammittal/2023/10/18/the-challenges-of-counter-drone-technology-as-seen-in-recent-conflicts/?sh=1ae368547013
https://defensescoop.com/2023/08/30/socom-counter-drone-software/
https://www.tpr.org/military-veterans-issues/2023-10-18/a-new-school-will-train-u-s-troops-to-fight-a-growing-threat-small-weaponized-drones
ウクライナやイスラエルを含むほとんどの軍は、現在ドローン対策に多額の投資を行っている。最新のレーダーやセンサーを備えた地対空ミサイルや機関砲は、主に大型ドローンに対し効果的だ。しかし、低空を飛行する小型ドローンに対しては探知や撃墜が難しい事が課題となっている。このため、多くの国が小型ドローンに対抗するための専用システムを開発しているのだ。
<ドローン対策システムの分類>
ドローンへの対処法は、一般的に「物理破壊型(キネティック)」と「非物理破壊型(非キネティック)」の二つに分類される。
物理破壊型は、弾丸やミサイルなどを使ってドローンを攻撃する方法だ。ほとんどの物理破壊型は、捕捉レーダーと射撃精度向上のための統制装置が連動している。
一方で非物理破壊型は、ドローンの飛行に不可欠な信号回路を遮断することでドローンを妨害する。いわゆるジャミングと呼ばれる行為だ。これらのシステムでは、ドローンの制御信号に妨害波(ノイズ)を発射する。その結果、ドローンは制御信号を検出できなくなり、墜落(または着地)するという仕組みだ。さらに一部の非物理破壊型は、偽のGPS信号を送信することで、事前にプログラムされた自律飛行を中断させる方式も採用している。
ロシア軍がドローンを頻繁に使用しているため、ウクライナへの武器支援には多くの対ドローン装備が含まれる。例えば、米国からは「車載式対空砲、レーザー誘導システム、迎撃用ドローン」などが提供されている。さらにウクライナ兵士の画像には、「対ドローンライフル」が写っているものがあるが、これはドローンの航行を妨害する指向性パルスを発射する非物理破壊型である。
イスラエルでは、ラファエル社が「ドローン・ドーム」、エルビット社が「Re Drone」と呼ばれる非物理破壊型の対ドローンシステムを開発している。これらのシステムは、3Dレーダーや信号分析器、高性能カメラでドローンを検知し、ノイズ信号を発信してドローンを妨害する。ドローン・ドームとRe Droneは、重要なインフラをドローン攻撃から防護するため多くの国で採用されており、民生用ドローンの対処には効果的とされている。
<対ドローンシステムの限界>
しかし、軍用ドローンに対する信号妨害は効果がない場合も多い。例えば、ロシア軍が多用する小型ドローン「Orlan-10」は、ジャミングに効果のない自律飛行モードを備えている。また、ウクライナ軍がドローンに対して物理破壊型を使用する際、ロシアの電子戦部隊は物理破壊型が使用するレーダー波を標定して、正確なカウンター砲撃を実施している。このため、ドローンに対抗することは非常に困難となっているのだ。
10月7日のイスラエル攻撃では、ハマスが組織的にドローンを運用している。彼らは市販のドローンを改造し、爆発物を搭載してイスラエルの防衛線を攻撃した。これらのドローンは低空飛行が可能で、レーダーに探知されにくい。さらに、電子妨害に対抗するため周波数が変更されているという。ハマスのドローン攻撃は主に都市部で行われ、建造物による視界の遮断がドローンの迎撃を更に困難にした。
ウクライナとイスラエルが直面しているドローン対策は技術的な限界を浮き彫りにした。急速なドローン技術の進化に対して、軍が開発する対ドローン技術は追いついていない。ウクライナとイスラエルのドローン攻撃が示すように、現在のドローン対策技術はドローン攻撃を完全に抑止できるレベルには達していないのが実情である。
【参考】
https://www.forbes.com/sites/vikrammittal/2023/10/18/the-challenges-of-counter-drone-technology-as-seen-in-recent-conflicts/?sh=1ae368547013
https://defensescoop.com/2023/08/30/socom-counter-drone-software/
https://www.tpr.org/military-veterans-issues/2023-10-18/a-new-school-will-train-u-s-troops-to-fight-a-growing-threat-small-weaponized-drones