NSBT Japan https://nsbt-japan.com/ 安全保障ビジネスの情報サイト。国内外の厳選した安全保障に関するニュースや、映像コンテンツ、ビジネスマッチングの機会を提供します。 ja https://nsbt-japan.com/images/logo.gif NSBT Japan https://nsbt-japan.com/ オーストラリア、1回の充電で50機のドローンを撃墜するレーザー兵器を導入 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fndepk9ev 2024-04-26T09:00:00+09:00
 三脚に取り付けたFractl:2
【画像出典】X:
https://pbs.twimg.com/media/GJzqwzDakAAssd3?format=jpg&name=900x900

 
オーストラリア国防軍(ADF)は、1回の充電で50機以上のドローンを撃墜できるという新しいレーザー兵器を調達した。
 
製造元のAIM Defense社によると、2019年に開発された「Fractl:2」と呼ばれるその兵器は、鋼鉄を焼き切れる出力があり、電池式のため持ち運びも可能だ。三脚に取り付けたり、コンセントに接続し連続して動作させたりすることができるだけでなく、バッテリー駆動のため、使用コストは極めて安価であるという。また、時速100kmで移動する敵のドローンを追跡し、高い精度で撃墜することもできる。さらにこの武器は、一般的な失明のリスクを抑えるため、いわゆるアイセーフレーザーを使用する等、目の安全対策を強化して設計されている。
 
「Fractl:2」は過去2年間に屋内外で200機以上のドローン撃破に成功したと、同社の共同創設者であるジェイ・ダニエル氏は述べる。その性能はさらに向上し「Fractl:2」使用時に伴う危険は100分の1に減少した。「Fractl:2」は世界で最も安全な高出力レーザーシステムといえる。もう一人の共同設立者であるジェシカ・グレン氏は、「無人機やその他の自律システムに対抗することは、世界中の軍隊にとって『最も必要な能力のひとつ』である」と言及している。
 
ドローンはロシアによるウクライナ侵攻で重要な役割を果たし、紅海ではフーシ派の反政府勢力が攻撃に使用している。オーストラリアがレーザーベースの対ドローンシステムの調達を決定したのは、無人プラットフォームの脅威が高まる中でのことだ。
 
過去4年間、AIM Defense社はオーストラリアの防衛イノベーション・エコシステムと協力して、費用対効果が高く、高精度で配備可能な指向性エネルギー・システムを構築してきており、「Fractl:2」はその成果である。
 
オーストラリア国防総省は、490万豪ドル(約4億9千万円)を購入支援に充てたという。この兵器が2024年半ばに納入されれば、指向性エネルギー・システムはオーストラリアの防空能力を強化し、ステルス無人機を撃墜するために必要な弾薬の数を減らすと期待されている。
 
しかし、こうした技術に対して疑問を持つ声もある。例えば、オーストラリア国立大学のショーン・オバーン教授(航空宇宙工学)は、AIM Defense社の技術をまだ見たことはないと断ったうえで、「焦点を合わせることができる光学系が必要で、それには技術的な課題がある。また、焦点を合わせる場所に十分なパワーを高速で供給するという課題もある。これらすべてを可能にするポータブルなプラットフォームを構築することは、チャレンジングなことだ」と述べている。
 
※1豪ドル=100円換算



【参考】
https://www.thedefensepost.com/2024/03/27/australia-laser-weapon-drones/?expand_article=1
 
https://www.australiandefence.com.au/news/news/aim-defence-lands-adf-contract-for-laser-based-counter-drone-system
 
https://australianaviation.com.au/2024/03/defence-acquires-australias-first-laser-based-anti-drone-system/
 
https://www.theguardian.com/world/2024/mar/26/australian-military-buys-5m-laser-based-anti-drone-system



 
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnppi8c8c 2024-04-25T16:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 中国の高高度無人機が日本海上空を飛行 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnkhxcr2y 2024-04-25T09:00:00+09:00
 航空自衛隊が撮影した高高度無人機「WZ-7
日本海上空で確認されるのは初めてである。 
   【画像出典】Xhttps://twitter.com/jointstaffpa/status/1774353440254415328/photo/2


 
2024年3月26日、中国軍(PLA)の高高度無人機WZ-7(以下、WZ-7)が、日本海上空を飛行した。この無人機は独特な接合翼のデザインで、2017年頃から運用されている。WZ-7は台湾周辺や、中国とインドの国境沿いで頻繁に偵察活動を行なっているが、日本海周辺への飛行が確認されたのは初めてである。
 
中国空軍(以下、PLAAF)と海軍(以下、PLAN)が共同運用するWZ-7についての詳細は明らかにされていない。推定では、航続距離は約4,350マイル(約7,000km)で、航続可能高度は60,000フィート(約18,300m)、滞空時間は10時間以上と見られている。
 
米国の軍事情報サイト「The War Zone」によると、この無人機の性能は米国のRQ-4グローバル・ホークのような高高度・長耐久(HALE)無人機には及ばない可能性が高いという。しかしWZ-7は、中国のインド国境や台湾海峡周辺のSIGINT情報収集、監視、偵察(ISR)任務に関しては十分な飛行高度と航続距離があり、中国軍が行なうほとんどの任務に適している。
 
日本海上空を飛行したWZ-7の任務は不明だ。しかし、同じ日に自衛隊は、日本海を航行する3隻のPLAN艦船(052D型駆逐艦、054A型フリゲート、903型補給艦)を確認している。WZ-7が高高度から日本海沿岸のPLAN艦船の活動をサポートした可能性は高い。
 
また、重要なのは飛行経路である。中国には日本海に直進できる飛行経路がない。大陸方向から飛来し、逆方向に戻ったとすれば、往復ともロシアか北朝鮮の上空を通過したことになる。
 
中国の無人機が北朝鮮上空を飛行する可能性は高い。中国は北朝鮮の重要な同盟国で、両国は日本や米国を競争相手であり、敵対国であると考えている。
 
一方、ロシアの空域を利用する方法もある。2022年11月、中国のH-6K爆撃機とロシアのTu-95戦略爆撃機が、日本海上空を含む日本周辺を長距離にわたって共同飛行した。ウクライナ侵攻以降、世界で孤立するロシアと中国の結びつきは非常に強まっている。
 
WZ-7がどのように日本海を往復したのか、確かな情報は分かっていない。しかし友好国とはいえ、軍用無人機が外国の空域を横断して任務を行なうというのは、新たな展開である。
 
中国本土から遠回りのルートでしかアクセスできない日本海に外国の空域を利用することは、中国軍が今後の作戦を行なう上で、新たな選択肢を得ることになる。経由ルートが短縮されれば、無人機や有人機が作戦空域に到着してから長時間任務を行なうことも可能だ。
 
例えば、WZ-7の所属する中国東北部の双遼空軍基地から、日本海までの往復距離は、約2,700マイル(約4,400km)である。北朝鮮上空を横断した場合は、これが半分になるのだ。
 
中国軍は日本海だけでなく、他の海域においても大きな野心を抱いている。2023年8月には、中国とロシアの艦船11隻からなる船団がアラスカ沖で、艦載機を含む大規模な軍事演習を行なった。
 
2024年3月の米議会報告において、米北方軍司令官のグレゴリー・ギヨー大将は「幸いなことに、米国の防空識別圏において中国機の飛行は確認されていない。しかし、早ければ2024年中にもそのような事態になる可能性がある。中国軍は航空機だけでなく、艦船や潜水艦でさえも本国から遠く離れ、わが国の沿岸に近づくことができる」と述べている。
 
ギヨー大将の発言を考慮すると、ロシアや北朝鮮を経由した日本海上空での無人機飛行が今後も日常化するか、十分な注視が必要だ。日本海上空で初めて確認された今回のWZ-7の飛行は、今後の中国軍の作戦行動を示す重要な兆候となる可能性がある。

 
【参考】
https://www.twz.com/air/first-known-chinese-wz-7-high-altitude-drone-flight-over-sea-of-japan
 
https://gendai.media/articles/-/126697?page=3
 
https://www.eurasiantimes.com/chinas-wz-7-soaring-dragon-caught-snooping-over-sea/
 
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クライシスインテリジェンス管理者
ロシア企業、新型ドローンを公開 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnerwv236 2024-04-24T15:00:00+09:00
ロシア軍の主要ドローンの1つであるシャヘド 
【画像出典】米国平和研究所:
https://iranprimer.usip.org/sites/default/files/Shahed-129%20Drone.jpg


 
ロシアの無人航空機開発企業ザラエアログループ(ZALA Aero Group)は、アイテム55(Item-55)またはイズジェリェ55(Izdeliye-55)と呼ばれる新型ドローンを公開した。ドローンのスペックに関する詳細は明らかにされていないが、写真等の情報からこのドローンがこれまでのドローンに見られない特徴を備えていることが明らかになっている。
 
公開された写真によると、アイテム55はクワッドコプターと呼ばれる4つの翼を持った典型的なドローンの設計だ。しかし特徴的な点として、翼の形がX字型であるXウイングという設計を採用している。これにより揚力が高まり、長い航続距離の実現が可能となるのだ。
 
またアイテム55は遠隔発射機能という、離れた場所から発射作業を行える機能を備えており、作業員の安全を確保できる特徴を持つ。米軍のスイッチブレード300(Switchblade 300)も同様の機能を持つが、アイテム55はスイッチブレード以上に離れた場所からの操作が可能だ。
 
ザラエアログループが強調するアイテム55のその他の強みは、電波妨害への対策である。同社の発表の中では「ザラエンジニアリングの開発チームによる新たなソリューションは、イズジェリェ55(アイテム55)を他の徘徊型兵器と明確に差別化し、敵の電子戦システムに対して完全に無敵の状態を実現する」とされている。これまで、電波妨害は無人飛行ドローンに対する最も効果的な対策と考えられており、ザラエアログループが発表したように電波妨害が無効となれば、対ドローンの戦闘は新たな段階に突入する可能性がある。
 
戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)のザック・カレンボーン(Zak Kallenborn)氏は、この電波妨害を受けないシステムは自律最適モード(Autonomy optimal mode)である可能性を指摘した。これは「ドローンが人間の制御なしに運航し、標的の選別、攻撃を行うことが可能」なシステムのことだ。同氏は「本当の意味で電子戦の影響を受けないためには、外部のコマンドへの依存を最小限にする、あるいはなくす必要がある」と述べている。
 
新たなドローンの高い性能が注目されている一方で、現在運用されているドローンの能力を超えることができるかという疑問も上がっている。例えばロシア軍の最新型ドローンであるランセット(Lancet)やシャヘド(Shahed)は、ウクライナ侵略においても利用されており、それぞれ軍事目標、インフラ等の攻撃において効果を上げているという。
 
兵器市場に目を向けると、新たなドローンの登場はロシアのドローン兵器市場に新たな潮流を生み出す可能性があると、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)のサミュエル・ベンデット(Samuel Bendett)氏は指摘する。同氏も、アイテム55は、既存のランセットなどのドローンと比べ劣っている可能性を認めている。しかしながら、戦闘用ドローンに対する需要は大きく、アイテム55にも十分な需要があるという。ロシアは入手できる限りの多種のドローンを必要としており、多少の価格や質における優劣は大きな問題にならない。ドローン市場には将来の大きな需要が見込まれているため、新たな生産ラインの展開や、様々な製造方法の模索などは中長期的なメリットも大きいとみられる。



【参考】
https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2024/01/03/kalashnikov-unveils-jam-proof-attack-drone/?sh=4495bfa6729a
 
https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2022/12/01/russian-loitering-munition-racks-up-kills-but-shows-limitations/
 
https://kyivindependent.com/how-russias-homegrown-lancet-drone-became-so-feared-in-ukraine/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】米ガルビオン社がNATO諸国から弾道ヘルメット125,000個を受注 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn3nuw7td 2024-04-24T14:00:00+09:00
ガルビオン社製の弾道ヘルメット「CAIMAN」
【画像出典】GALVION:https://www.galvion.com/  
統合ヘッドシステムおよびインテリジェント・パワー、データ管理ソルーションの分野をリードする米ガルビオン(Galvion)社は、このたびNATO支援調達庁(NSPA)のフレームワーク契約を通じて、「Batlskin Caiman®システム」の新規受注を3件獲得した。これらの新規受注と、以前発表されたノルウェー、フィンランド、スウェーデンからの受注と合わせると、NATO加盟国が同社に発注したヘルメット・システムの総数は125,000を超え、さらに数万が準備中であるとのこと。
 
2022年12月、ガルビオンはNATO支援調達庁(NSPA)からNATO加盟国およびパートナー諸国向けに高性能の「Batlskin Caiman®」ヘッドシステムとその付属品の調達に関するフレームワーク契約を獲得していた。急増する需要に対応するため、ガルビオンはポーランドのグダニスクに欧州での生産拠点を設立するための投資を行っていると2023年9月に発表されており、2024年後半にはこれが開設される予定とのことだ。同時にガルビオンは英国のNP Aerospace社と生産提携を結び、英国およびより広範なNATO市場でのヘルメットの需要増に対応する。このパートナーシップにより現在、ガルビオンは「Cobra® Plusヘルメット」を英陸軍が進める戦闘装備改善プロジェクト「VIRTUS」向けに、また「Batlskin Caiman®システム」をNATO向けに供給している。
 
NATO諸国が発注するNSPAフレームワーク契約は、NSPAの監督の下、主要ユーザー国であるノルウェーが実施した大規模なユーザートライアルを経て締結された。指定された4つのヘルメット・カテゴリのうち、もっとも高性能な基準を満たすように設計されたガルビオンの「Caiman®ヘルメット」には5つのサイズがあり、ガルビオンの最新の「APEXライニング・システム」が装備されている。これは、ユーザーが直感的に調整をすることが可能であり、カスタマイズされたフィット感を提供する内装システムである。
 
「この契約は、NSPAが国家と産業界の双方に付加価値を提供している好例である」「NLSE(NATO Logistics Stock Exchange)[注]の利用を通じて、NSPAは技術的要件と最新機器をとりまとめ、各国がウェブ上のプラットフォームで必要なものを調達できるようにしている」とNATO支援調達庁(NSPA)のプログラム・ディレクターであるセリーヌ・ダニエリ(Céline Danielli)は述べている。
 
また、ガルビオンのCEOであるTodd Stirtzingerは「より多くの国がノルウェー、フィンランド、スウェーデン以外にも、NSPAを通じて当社の主力製品であるCaimanヘッドシステムを発注する国が増えたことを誇りに思う」と述べている。
 
[注]NLSE(NATO Logistics Stock Exchange)とは、NATOの軍隊が保有する在庫情報を収集し、可視性を高め、将来の補給要件を積極的に予測できるようにすることを目的としたプロジェクトである。
 
【出典】
https://www.galvion.com/blogs/newsroom/galvion-surpasses-a-milestone-of-125000-caiman-ballistic-helmets-ordered-by-nato-countries]]>
クライシスインテリジェンス管理者
米海軍、2026年に海上でマイクロ波ドローン兵器をテストへ https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn3u267jj 2024-04-24T09:00:00+09:00
アデン湾で高エネルギー・レーザー兵器システムのデモンストレーションを行うUSSポートランド(LPD27)
【画像出典:flickr】https://www.flickr.com/photos/56594044@N06/51748685121/


 
米海軍の2025会計年度予算文書によると、米海軍は早ければ2026年に高出力マイクロ波プロトタイプシステムを艦艇に搭載する計画だという。
 
このシステムは、2026年に艦船に搭載する予定の指向性エネルギー兵器システムのプロトタイプを開発している米海軍のプロジェクト「METEOR」によるものだ。予算書によれば、「METEOR」は1発あたりのコストが安価で、戦術的に重要な射程距離を持ち、短時間で多目標に接近し撃破する能力を提供するという。米海軍初の高出力マイクロ波システムで、陸海空軍が安価な無人航空機システムに対抗するため模索している指向性エネルギー兵器システムの一種となる。
 
米海軍が使用する他の指向性エネルギーシステムと「METEOR」のプロトタイプは、標的を無力化するメカニズムが異なる。「METEOR」のプロトタイプは、集束した光線の代わりにマイクロ波エネルギー(HPM)を使ってターゲット内部の電子機器にダメージを与える仕組みだ。
 
米海軍は、HPMシステム特有のこのメカニズムが、中国人民解放軍が実戦配備しているような対艦弾道ミサイルを撃墜すると考えている。
 
また米海軍には、別のHPMプロジェクトもある。この取り組みは、米海軍の高速防衛実験予備軍(RDER)プロジェクトの1つとして資金提供を受けている。
 
RDERは、ハイディ・シュウ国防次官(研究・工学担当)が2021年に開始したイニシアティブだ。サービスや戦闘司令部が特定した能力のギャップに対応するプロジェクトやプログラムを選択し、その取得を加速させることが目的である。
 
HPMシステムは、紅海やインド洋など、フーシ派が何百もの無人航空機や対艦巡航ミサイルを艦船に向けて発射し、世界貿易を妨害している他の海域でも役に立つだろう。
 
米海軍は来年ホワイトサンズ・ミサイル発射場で、METEORと並んでHELCAP (High Energy Laser Counter Anti-Ship Cruise Missile (ASCM) Project:対艦巡航ミサイル攻撃用高エネルギーレーザープロジェクト)として知られる高エネルギー・レーザー・カウンターのテストも計画している。このシステムもまた、代用巡航ミサイルのターゲットに対する迎撃テストを受ける予定だ。
 
しかしMETEORとは異なり、HELCAPは艦船に搭載されるプロトタイプは予定されていない。指向性エネルギー兵器システムのもう一つのタイプはレーザーである。米海軍は現在、2種類の高出力レーザー・システムを艦船に搭載して運用している。



【参考】
https://news.usni.org/2024/03/27/navy-to-test-microwave-anti-drone-weapon-at-sea-in-2026
 
https://nationalinterest.org/blog/buzz/project-meteor-navys-plan-high-power-microwave-weapons-210353
 
https://warriormaven.com/sea/navy-to-fire-anti-drone-microwave-weapon-at-sea

 
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クライシスインテリジェンス管理者
米オービット・ファブ社、宇宙軍に衛星給油ポートを初出荷 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnv4w7ug9 2024-04-23T15:00:00+09:00
Orbit Fab 燃料シャトル
【画像出典】X:https://pbs.twimg.com/media/GJ8LwI6XsAIdX1e?format=jpg&name=small


 
人工衛星に燃料を補給するための宇宙貯蔵ステーションを開発している米国オービット・ファブ社(本拠地、コロラド州)は、同社が開発した燃料インターフェースが飛行証明を取得し、宇宙軍を含む顧客に出荷する準備が整っていると発表した。
 
同社のRapidly Attachable Fluid Transfer Interface(RAFTI)は人工衛星に取り付けられ、打ち上げ前に宇宙または地上で推進剤を受け取れるように設計されている。
 
過去2年間、オービット・ファブ社は、過酷な宇宙環境での飛行に耐えうるポートであることを確認するため、地上試験と軌道上試験を実施してきた。
 
この資格認定が完了したため、同社は衛星への搭載を希望する顧客に最初の12個のRAFTIポートの出荷を開始した。そのうち8つは宇宙軍向け、残りの4つは詰め替え可能なガスタンクを備えた宇宙船を開発しているアストロスケール社を含む他の顧客向けである。
 
オービット・ファブ社はさらに10数台のRAFTIを生産する予定だ。同社のアダム・ハリスCCOは、「今年の生産台数は約100台に達する」と述べている。また同社は、他の企業ともライセンス契約を締結した。
 
「多くの企業にポートの製造を許可することで、市場での入手性が高まると期待している。1社だけでなく、複数の企業が何かを提供できるようになれば、宇宙軍が希望している再利用と燃料補給が可能な衛星への移行が現実になる」とハリス氏は語る。
 
宇宙軍は今後数年間、衛星への燃料補給の実証実験を行う予定だ。米国宇宙軍関係者は、主要な宇宙船、特に軌道上で敵国衛星の活動を観測するように設計された宇宙船が燃料切れを懸念することなく、より自由に移動できるように、10年後までに国防総省のすべての宇宙船に給油ポートの装備を求めている。
 
ハリス氏は「宇宙軍が新しい衛星を作るときは、いつでもRAFTIを利用できるようにしている。オービット・ファブの目的は可能な限りRAFTIを提供することだ」と語る。
 
これには、宇宙軍が最近発表した、給油オプションを備えた宇宙状況監視衛星を求める情報提供要請も含まれる。
 
一方、同社は宇宙軍防衛イノベーションユニット空軍研究所(AFRL)と協力し、今後の燃料補給デモンストレーションを支援し、技術開発の取り組みを進めている。
 
2026年に予定されている実証実験では、オービット・ファブ社の燃料貯蔵ステーションとRAFTIポートが役割を果たすことになる。計画では、インパルス・スペース社製の宇宙船が燃料貯蔵ステーションをホストする予定だ。その後、補給所はアストロスケール社製の整備用ビークルに燃料を補給し、AFRLのテトラ5ミッションの一部である3つの衛星に燃料を供給することになる。
 
オービット・ファブ社の貯蔵ステーションは主要な設計審査を通過し、2025年の打ち上げを目標に、今年中にシステムの製造と試験の準備を開始する予定だ。同社はまた、給油技術を向上させるための別の取り組みで、宇宙軍の迅速能力局とも協力している。このプログラムは2025年までに実施されるという。



【参考】
https://www.orbitfab.com/news/rafti-flight-qualified/
 
https://www.defensenews.com/battlefield-tech/space/2024/03/22/orbit-fab-ships-first-satellite-refueling-ports-to-space-force/
 
https://uchubiz.com/article/new37682/
 
https://sorabatake.jp/34851/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】ロールス・ロイスがNASAと電力変換開発契約を締結 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnv8wj7ke 2024-04-23T12:00:00+09:00
米クリーブランドにある米航空宇宙局(NASA)のグレン研究センター
【画像出典】Glenn Research Center:
https://www.nasa.gov/glenn/  
ロールス・ロイスが4月22日、クリーブランドにある米航空宇宙局(NASA)のグレン研究センター向けに先進的な閉鎖型ブレイトンサイクル(CBC)装置を開発するため、100万ドル(約1億5400万円)の契約を獲得したと発表した。12か月の契約期間にわたって、ロールス・ロイス・リバティワークスは、宇宙ベースの次世代小型核リアクター用の閉鎖型ブレイトンサイクル(CBC)電力変換システムの予備設計を提供する。
 
ロールス・ロイスのジョン・シェイド上級副社長(経営企画・将来計画担当)は次のように述べている:
 
「NASAの電力変換開発契約に選ばれたことは、ロールス・ロイス・リバティワークスが米国におけるマイクロリアクター電力変換の将来に向けた先駆的な進歩においてリーダーシップを発揮していることの証左です。この投資は、宇宙での堅牢な運用を可能にするための極めて重要な一歩であり、信頼性が高く、クリーンで効率的な電源による宇宙探査の新時代への道を切り開きます。このプログラムのチームメイトと協力して、私たちは未来を思い描いているだけではなく、それを設計しています」
 
ロールス・ロイスは、米国防総省(DOD)が進めている「PELE計画(Project Pele)」をサポートしている。同計画は、輸送可能な小型原子炉であるマイクロリアクターの実用化を目指すものである。また、ロールス・ロイスは英国宇宙庁(UKSA)と協力して宇宙用の小型原子炉のコンセプト設計も開発している。
 
グレン研究センターは、1942年に米航空諮問委員会(NACA)の一部として設立され、後に航空機エンジン研究の研究所としてNASAに組み込まれた。1962年にアメリカ人として初の軌道宇宙飛行を行ったジョン・グレン上院議員にちなんで改名された。現在もジェットエンジンに関する重要な研究と技術開発を行っており、エネルギー消費、汚染、騒音を削減する設計を生み出している。騒音低減のためにグレン研究センターが発明したシェブロン・ノズルは、現在、ボーイング787を含む多くの民間ジェットエンジンに採用されている。
 
※1ドル=154円換算
 
【出典】
https://www.rolls-royce.com/media/press-releases/2024/22-04-2024-rolls-royce-libertyworks-selected-for-nasa-power-conversion-development-contract.aspx]]>
クライシスインテリジェンス管理者
中国、戦闘機技術で米国を追う https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnoiz33d3 2024-04-23T09:00:00+09:00
米軍の最新鋭戦闘機F-22ラプター
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2019/Aug/07/2002168418/1280/1280/0/190721-F-VA182-1003C.JPG


 
中国は第6世代戦闘機の開発を本格化させている。中国の取り組みを分析すると、同国が西側諸国との技術的な差を縮めようとしていることがわかる。興味深いことに、現在開発を行っている第6世代戦闘機の設計は、米軍の第6世代戦闘機と部分的に同じであることが明らかとなっている。
 
現在の最新の戦闘機にあたる第5世代戦闘機を製造、配備しているのは世界中で米国・ロシア・中国の3か国のみで、その他の国々は第4世代以下の戦闘機を運用中である。そして現在、この3か国が中心となって第6世代戦闘機の開発競争を展開しているのだ。とはいえ、第6世代戦闘機の定義は必ずしも明確ではなく、大まかに第5世代よりも技術的に大きく発達したものという意味で用いられている。
 
第6世代戦闘機にはいくつかの重要な改良が予想されている。技術、設計上の大きな変更となるのは、ステルス性能、兵器の格納容量、電子機器の近代化などである。性能面においては、人間とオートメーションシステムの統合、射程の長い兵器の運用などが期待されている。
 
中国航空工業集団(Aviation Industry Corporation of China)は昨年、SNS上に次世代戦闘機の設計を描いたCG映像を公開した。この映像の中では、同戦闘機が尾翼を持っていないという重要な情報が明らかにされた。これはロッキード・マーチン(Lockheed Martin)社が中心となっている、米国の次世代戦闘機計画である次世代航空支配(Next Generation Air Dominance, NGAD)の中で検討されている特徴と同じである。この設計はステルス性能を高めることが可能であると考えられており、米軍は中国がこの映像を公表する以前から検討を進めていた。とはいえ、中国、米国ともにこの設計が実際の戦闘機に採用されるかは明らかでない。
 
中国の目標は、次世代戦闘機の開発で先頭に立っている米国やヨーロッパ諸国に技術面で追いつくことである。しかし、現段階では中国の研究開発がどれほど進んでいるかは不明だ。実際には、軍事技術の大半において世界のトップにいる米国が、依然として水をあけている可能性が広く指摘されている。
 
米国の次世代航空支配においては、第5世代戦闘機F-22ラプター(F-22 Raptor)の後継として、戦域の航空支配を主な目的とした戦闘機を開発中だ。この計画では、最新の武器、電子戦システム、センサー等を搭載した戦闘機を開発しているとみられている。また高度化された無人航空機や通信システムと連携することで、さらに強力になる見込みだ。特に僚機には協調戦闘機(Collaborative combat aircraft)という無人機を採用し、有人戦闘機F-22との連携を目指している。現時点では2020年台後半に試験飛行、改良を進め、2030年から導入される予定である。
 
この米国の計画は、様々な領域における世界最高レベルの技術を用いたもので、中国がこの計画に追いつくのは難しいという見方が大きい。今後、航空機の技術で米中のどちらが優位に立つかは、米中の軍事的緊張が高まる中で大きな意味を持つ。



【参考】
https://nationalinterest.org/blog/buzz/china%E2%80%99s-6th-generation-fighter-trouble-us-military-210262
 
https://asiatimes.com/2023/11/lockheed-martin-teases-tailless-next-gen-fighter-concept/
 
https://www.airforce-technology.com/projects/next-generation-air-dominance-programme-us/?cf-view
 

 
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クライシスインテリジェンス管理者
米陸軍、人間とロボットの統合部隊創設を計画 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn8p7ycig 2024-04-22T09:00:00+09:00
米軍のドローンGhost 
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2021/Apr/09/2002617893/1088/820/0/210325-M-KE294-073.JPG


 
米陸軍は現在、人間とドローンを統合した新たな部隊の設立を進めている。人間が従来担っていた役割の一部をドローンが代替し、少数で複雑な作戦行動を完遂できる能力の獲得を目指しているのだ。
 
最新のドローンでは、単独で空中からの偵察、爆撃、あるいは地上での銃撃戦などを行うことが可能だ。現在取り組んでいるのは、それらと人間とが相互に連携し、1つの指揮命令系統の下で作戦行動を行う能力の開発である。米陸軍将来コマンド(United States Army Future Command)のジェームズ・レイニー(James Rainey)大将は、「将来的に部隊とドローンは完全に統合され、隊員が危険にさらされる可能性ははるかに小さくなるだろう」と展望する。また同時に「隊員を、人間にしかできないこと、つまり戦闘中の倫理的な意思決定に注力させることも可能になる」と述べる。
 
この計画に用いられているドローンの1つは、Ghost-Xと呼ばれる航空機だ。これは2023年9月に最新型に更新された機種であり、最大飛行時間75分、9kgのペイロードに加え、GPSに依存しないナビゲーションシステムを搭載している。また他の無人機の中には機関銃を装備し陣地に向けて射撃を行うロボットや、偵察用の犬型ロボットなども含まれる。
 
2025会計年度予算要求では、この部隊の編成のための予算がはじめて盛り込まれた。予算要求の中では、「この編成が兵士のリスクを軽減し、かつ意思決定のためのさらなる情報をもたらすことが可能」となっている。また25会計年度中に実験や演習の実施も計画されており、全体で3,300万ドル(49億8,300万円)を要求した。
 
米陸軍は、無人航空機、戦闘車両の開発というテクノロジーの課題とともに、テクノロジーを戦場で最大限に活用する方法の探求にも取り組んでいる。技術開発の責任者であるアレクサンダー・ミラー(Alexander Miller)氏によると、米陸軍はここ1年から1年半程度の間に、兵士の代替ではなく戦闘等、様々な場面でロボットが最も力を発揮する方法を模索し始めたという。ロバート・ラッシュ(Robert Rasch)中将は「人間の能力と組み合わせ最高の能力を発揮するために、どのようにテクノロジーを扱えばよいかを知る必要がある」としている。
 
米軍は部隊と無人機の統合の試みを大きく前進させつつあるが、同時に今後の課題も見つかっている。問題の一つは、技術の発達が先行しすぎることで、戦術的な利用可能性の検討が追い付かない点である。ミラー氏は、「テクノロジーの進展によって低コストで行える作戦上の選択肢が急増しており、かえって現場が混乱している」と明かした。
 
また、新たな技術、作戦の導入には何段階もの実験、改良のプロセスが必要となる。例えば、今年行われた無人機部隊による村の奪還作戦では、電波妨害により無人機群が落下するという事態が発生した。これはWi-Fiの機能の変更により解消されたという。3月には無人車両による爆索(地雷の爆破処理)の実験が行われたが、不具合により地雷の処理に失敗しており、改良が行われている。
 
さらに、もう1つの課題として柔軟な資金運用ができていない点が挙げられる。現在は議会が承認した用途外に支出することができないため、開発の途中でシステムや仕様を変更するために、改めて議会からの許可・承認が必要となる場合がある。この硬直性が開発の柔軟性を妨げているのだ。陸軍のランディ・ジョージ(Randy George)参謀総長は、「技術的な課題のみならず、議会を説得し、より柔軟な予算枠の中で技術を開発、実装できるようにする必要がある」と述べる。
 
戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)のベンジャミン・ジャンセン(Benjamin Jensen)上級研究員は、人間とロボットの統合について「楽観的」であるとしつつも、陸軍が想定しているよりも時間がかかる可能性があると指摘している。世界中の国々が競ってドローン、ロボット開発に力を入れる中で、米国がどれほど開発を進められるかは一つの焦点となる。
 
 
※1ドル=151円換算



【参考】
https://www.defensenews.com/unmanned/2024/03/25/the-robots-are-coming-us-army-experiments-with-human-machine-warfare/
 
https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/dsei/2023/09/12/anduril-announces-ghost-x-with-more-payload-capacity-longer-flights/
 
https://www.defensenews.com/unmanned/2023/10/09/us-army-developing-integrated-formations-of-robots-and-humans/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】デンマークがアルゼンチンにF-16戦闘機24機を3億ドルで売却 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnfgci5fm 2024-04-19T16:00:00+09:00
デンマークのスクライドストラップ空軍基地でおこなわれた調印式
に参加するデンマーク、アルゼンチンの当局者たち
【画像出典】デンマーク国防省:
https://breakingdefense.com/2024/04/argentina-signs-300m-contract-for-24-danish-f-16-fighter-jets/

去る4月16日、デンマークのスクライドストラップ空軍基地にて、デンマーク空軍が保有する中古のF-16戦闘機24機を3億ドル(約460億円)でアルゼンチンに売却する契約が締結された。
 
デンマーク国防省の声明によると、デンマークのトロエルス・ルンド・ポールセン副首相兼国防相とアルゼンチンのルイス・アルフォンソ・ペトリ国防相が契約に署名したとのこと。契約の金額については言及されていないが、3億ドルという数字が広く報道されており、これはアルゼンチン政府による情報だとされている。
 
ポールセン副首相は、次のように述べている:
 
●「長年にわたって私たちによく貢献し、徹底的なメンテナンスと技術的なアップデートが施されたデンマークのF-16戦闘機が、アルゼンチン空軍で使用されることになり、大変うれしく思っている」
●「この契約により、我々はデンマークとアルゼンチンの防衛協力を強化するとともに、アルゼンチンはグローバルなF-16ファミリーの一員となる」
 
この契約締結は、ペトリ国防相とポールセン副首相がロッキード・マーティン社製の航空機の売却に関する趣意書に合意してから1ヵ月も経たないうちに行われた。この供与に関しては、米国政府も容認していた。デンマークの国防総省は、いつ引き渡しが行われるかは明らかにしなかったが、ダッソー・ミラージュⅢ戦闘機を退役させてからほぼ10年経過する中で、このF-16戦闘機がアルゼンチンの攻撃能力を再構築することになる。
 
アルゼンチンはパキスタンのPakistan Aeronautical Complex(PAC)と中国の成都飛機工業公司(CAC)が共同開発したJF-17戦闘機「サンダー」の購入提案を拒否したことにより、中国との協力に反対する側に回った。アルゼンチンはまた、インドが売り込んだヒンドゥスタン・エアロノーティックス・リミテッド(HAL)の戦闘機「テジャス」も断っていた。
 
デンマーク国際問題研究所(DIIS)のアナリストでありヤコブ・リンネット・シュミット(Jakob Linnet Schmidt)氏は以前、『ブレイキング・ディフェンス』誌に、アルゼンチン向けのF-16は「良好な状態」であり、あと10年は運用可能と思われると語っていた。
 
デンマークはウクライナへのF-16戦闘機19機の供給にもコミットしており、最初の機体は今夏納入される予定だ。さらに26機の航空機が欧州諸国によって約束されている。
 
デンマークのF-16は、ロッキード・マーティンの第5世代ステルス戦闘機 F-35A(27機)に置き換えられることになっており、その最初の4機は2023年10月にスクライドストラップ空軍基地に引き渡された。ロッキード・マーティンは当時、さらに6機のデンマーク機がアリゾナ州ルーク空軍基地に配備されると発表した。
 
デンマーク国防省によると、2024年前半に予定されていた追加納入は、ロッキード・マーティンが直面したテクノロジー・リフレッシュ3(TR-3)[注]におけるテスト・ソフトウェアのアップグレードにおいて問題が発生したため、今年後半に延期されている。
 
[注]テクノロジー・リフレッシュ3は、F-35の計算機コアを近代化するもの。
※1ドル=154円換算
  
【出典】
https://breakingdefense.com/2024/04/argentina-signs-300m-contract-for-24-danish-f-16-fighter-jets/
https://www.fmn.dk/en/news/2024/denmark-and-argentina-agree-on-sale-of-24-danish-f-16-fighter-jets/
 
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn6vyukd8 2024-04-19T12:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 F-15EX配備にむけ飛行試験を実施 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnop76hwm 2024-04-19T09:00:00+09:00
 飛行中のF-15EX戦闘機 
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2023/Dec/20/2003365692/1200/1200/0/231220-F-GY014-1062.JPG


 
今年後半に運用開始が予定されている戦闘機F-15EXの飛行試験が、最初の運用部隊となる予定のオレゴン空軍州兵(Oregon Air National Guard)によって実施され、搭乗したパイロットらはこの戦闘機の性能を絶賛した。
 
オレゴン空軍州兵はF-15EXの旧世代型であるF-15Cを運用している。F-15EXは一般的な戦闘機の約4倍の29,500ポンド(約13,380kg)と大きなペイロードを備え、飛行速度、距離も約2倍と大きく向上。また最新の電子戦機器や高いステルス性能、探知・追跡システムを搭載している。さらには空対空ミサイルを12発搭載でき(F-15の従来型は8発)、標的に対して複数のパスで同時に攻撃することも可能だ。
 
この戦闘機は2021年に初めて製造され、現在、米空軍が4機保有している。米空軍は、老朽化した旧型のF-15を更新するため同機の取得を検討しており、当初は144機を購入する予定だった。一時は180機の購入も計画していたが、後に98機にまで削減された。またインドネシア空軍も同機の取得を予定している。インドネシアと製造元であるボーイング社の間では、2023年8月に「コミットメント」を取り決めた覚書が締結されており、価格、機体数などの協議が行われている。しかし納入時期、価格等の詳細が未定であることに加え、ボーイング社製の他のいくつかの兵器で納入の遅れがみられること、価格が1機あたり1億ドル(151億円)程度に上る可能性があることから、先行きは不透明だ。
 
昨年11月にも飛行試験が行われ、空対空ミサイルの発射に成功したことが発表された。当時の公式発表によると、新たに設計された翼端付近のミサイル搭載ステーションから「効果的かつ安全に発射可能である」ことが確認されたという。またその際に試験を担当したクリストファー・ウィー(Christpher Wee)中佐は「パイロット、エンジニア、専門家らによって、F-15EXが敵国からの挑戦にいつでも対応する準備ができていることが証明された。F-15EXは米空軍にとって驚くべき能力の向上となる」と述べていた。
 
この戦闘機のさらなる利点は、基本的な構造が従来のF-15とその派生型に類似しているため、現在F-15を運用している部隊は訓練に必要な時間を短縮できる点である。今回飛行試験に参加したパイロットの場合は、普段F-15Cに搭乗しており、F-15EXを操縦できるようになるまでわずか2週間しかかからなかった。今回の飛行試験に先立ち、今年3月はじめから中旬にかけて訓練プログラムが実施され、5名のパイロットが訓練を受けた。今後、彼らが部隊に戻り他の隊員を訓練する予定である。
 
今回搭乗したオレゴン空軍州兵のパイロットの一人は、「最初にやるべきことは、操縦の基本を習得するための多くの勉強と練習である。(中略)これはパイロットである限り終わることはない」としつつも、「どのようにF-15EXを操縦するかという課題から、どのようにしてこれを戦術的に利用するかというフェーズに移れることが非常に楽しみだ」と述べている。また同機の性能について「エンジンはC型(F-15C)よりもはるかにパワーがあり、レーダーや電子機器も大きく改善されている」と明かした。
 
 
※1ドル=151円換算



【参考】
https://www.airandspaceforces.com/air-national-guard-oregon-f-15ex-awesome/
 
https://www.boeing.com/defense/f-15ex#global
 
https://boeing.mediaroom.com/news-releases-statements?item=131310
 
https://www.defensenews.com/air/2023/01/05/f-15ex-tests-added-missile-capabilities/
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クライシスインテリジェンス管理者
どうなるロシア選挙後のウクライナ侵略 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnwow6nut 2024-04-18T09:00:00+09:00
ウラジーミル・プーチン大統領 
【画像出典】X:https://twitter.com/ReutersJapan/status/1774580038773383314


 
2024年3月15日午前8時から始まったロシア大統領選の投票は、17日にウラジーミル・プーチン大統領(71)が圧勝するという結果に終わった。公式発表によれば、投票率77.44%、得票率は87.28%だ。最初からプーチン大統領の圧勝は明らかだった。今回の選挙ではロシア国民がプーチン体制とその政策を支持していると示すことが目的で、プーチン大統領は5度目となる当選を果たし、新たに任期6年を獲得した。
 
選挙は圧勝で幕引きとなったが、プーチン大統領の軍事戦略は新たな展開を迎えることとなる。2024年のウクライナにおけるロシアの戦略は、基本的には今まで通りだ。破壊活動を通じてウクライナの戦術的戦力を低下させ、民間人に対する攻撃作戦を実施することによって、ウクライナを征服する作戦に変わりはない。
 
4月1日、ロシアで18歳以上を対象とした春の徴兵が始まった。プーチン大統領が3月31日に署名した命令書によれば、約15万人が招集される。昨年の法改正によって、今回から上限が27歳から30歳に引き上げられた影響で、過去8年間でもっとも多い人数だという。ウクライナ侵攻の長期化で即戦力が不足しているため、新兵がどうしても必要なのだ。
 
一方のウクライナは最近、ロシア本土への反撃を活発化させている。プーチン大統領は西部ベルゴロド州が砲撃を受けないように、国境に接するウクライナ北東部ハリコフ州を緩衝地帯として占領する案を練っているという。ただ、実行するには大軍による包囲が必要となり、30万人の派兵を国防省が計画しているとも伝えられている。この場合、予備役のみで賄うことは難しい。1年間の兵役終了時に志願兵契約をするよう新兵に圧力をかけて、戦力不足を補うシナリオが想定されているようだ。
 
ゼレンスキー大統領は2023年12月の会見で、軍から最大50万人の追加動員を要求され、検討していることを明らかにしていた。その後、ロシアの攻勢に警戒を促し、徴兵の最低年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名。身体的な理由で徴兵免除となった人に新たな検査を義務づける法案、徴兵対象者の情報をオンラインのデータベースに保存する法案にも署名した。
 
現在のロシアの空爆と地上作戦は、ロシアが2024年の夏頃に大規模な攻撃を実施するための前哨戦である可能性が高い。ロシアは領土拡大に加え、ウクライナから多くの犠牲者を出すことに力を注いでいる。ロシアの思惑通りになれば、ウクライナ側にとっては軍事的にも政治的にも困難な問題が生じるに違いない。
 
ロシアの侵攻が3年目に突入した現在。ウクライナ軍は兵士不足だけではなく、西側諸国からの兵器や弾薬の供給遅れといった大きな問題に直面している。ウクライナを防衛するために必要な支援の提供は、西側諸国の裁量にかかっていると言えよう。ロシアもウクライナも深刻な問題を抱えているのだ。



【参考】
https://mickryan.substack.com/p/the-war-in-ukraine-after-the-russian?publication_id=1198399&post_id=142811367&isFreemail=true&r=kmzr1&triedRedirect=true
 
https://www.bbc.com/news/world-europe-68719473
 
https://www.reuters.com/markets/europe/what-are-putins-top-challenges-new-six-year-term-2024-03-20/
 
https://www.ukcolumn.org/article/for-as-long-as-it-takes-natos-war-on-russia
 


 
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnacngdh9 2024-04-17T17:30:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 インド、第5世代戦闘機の開発計画を承認 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn5h9bmh7 2024-04-17T15:00:00+09:00
 AMCAの模型図
【画像出典】X: https://x.com/idrwalerts/status/1774061124583084524


 
インドの安全保障に関する内閣委員会(CCS)は、第5世代のマルチロール機である先進中型軍用機(AMCA: Advanced Medium Combat Aircraft)の設計と開発のため、1兆5,000億ルピー(約2兆7,300億円)のプロジェクトを承認した。防衛研究開発機構(DRDO)傘下の航空開発庁(ADA)と国営のヒンドスタン航空機(HAL)が、同機の開発・設計を担う。

AMCAは国産の第5世代戦闘機となる予定である。AMCA開発に関する議論は2008年から開始され、当初のプログラムではロシアとの共同開発が予定されていた。しかし、インドは2018年に 同プロジェクトから撤退し、しばらく開発は停滞していたのだ。

以前にもインドは国産の第4世代軽戦闘機 (LCA) 、Tejasを開発した経験がある。AMCAの機体はTejasと異なり、敵のレーダーに探知されにくい電磁波吸収性による高いステルス性を有している。また、機体内部のウェポンベイや大型の内部燃料タンクなどもステルス性を保つための仕様である。機体外部に燃料タンクや兵装を取り付けると、レーダーで簡単に検出される恐れがあるからだ。内部のウェポンベイには、最大4発の長射程空対空ミサイルと多種多様な精密誘導兵器を搭載でき、ペイロードは1,500kgとなっている。

エンジンについては、AMCA Mk1型には90キロニュートン(kN)クラスの米ゼネラル・エレクトリック社のGE414エンジンが搭載されるが、バージョンアップしたAMCA Mk2型には、より強力な110kNのエンジンが搭載される。Mk2に搭載されるエンジンは極超音速での巡航能力を有し、推力ベクトル制御を備えた新しいエンジンは、海外企業と共同開発される予定である。Indian Express 紙はその企業として、世界最大の航空機エンジンおよび関連機器メーカーの1つであるフランスのサフラン(SA)社を挙げ、同社はDRDOのガスタービン研究施設(GTRE)と協議している、と報じた。

1年半以上も保留されていたCCSの承認を受け、ADAは4年半から5年以内にAMCAの初飛行の実現を希望している。ADAのAMCAプロジェクトディレクター、クリシュナ・ラジェンドラ氏は、「試作機5機が予定されており、この戦闘機の初飛行は2028年末までに行われる見込みだ」と述べた。

現在、インド空軍は約30の戦闘機飛行隊を保有している。しかし、MiG-21、MiG-29、ジャガー、ミラージュ 2000の飛行隊は、2030年代半ばまでに段階的に廃止される予定であり、飛行隊の減少は確実だ。そんな中、インド空軍はAMCAの保有規模を7つの飛行隊にすることを望んでいる。元インド海軍航空テストパイロットで航空評論家のK.P.サンジーヴ・クマール氏はDefense Newsに対し、インドにとってAMCAの重要性を強調している。「第4世代以下の航空機を保有する飛行隊の数がひどく不足していること、そして中国の脅威が高まっていることを考えると、AMCAは必要だ」とクマール氏は語った。

しかし、AMCAの開発スケジュールには多くの困難が待ち構えている。実際、最初の国産戦闘機であるTejasの開発では、初飛行は2001年、飛行隊に加わったのは15年かかり、開発から運用開始までの総計では30年となった。これ以外にも多くの問題点が指摘されている。カーネギー財団によれば、ステルス戦闘機を製造するために必要な研究と設計の専門知識がインド国防省には不足しているという。また、「インドの民間防衛産業は未熟であり、同機を大量に製造できる強力な防衛産業基盤がまだない」とも指摘した。前述のクマール氏は「最終的な作戦運用の楽観的かつ現実的な時期は、2040年以降だろう」と述べている。

中国と比べると、インドは戦闘機の数で大きく差をつけられている。現在、インドにとってエンジンの国産化は難題だが、差し迫る中国の脅威に対抗するためにも、さらなる航空機開発能力の向上を目指さなくてはならない。

※1ルピー=1.82円で換算


【参考】
https://www.defensenews.com/air/2024/03/13/india-approves-full-development-of-fifth-generation-fighter/

https://carnegieindia.org/2022/08/10/india-needs-to-fix-its-indigenous-fighter-before-building-stealth-aircraft-pub-87643

https://indianexpress.com/article/explained/india-indigenous-fifth-gen-fighter-jet-amca-9204814/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【シンクタンク情報】米ロスアラモス国立研究所がAI向けのスーパーコンピューターを発表 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnidrsich 2024-04-17T11:00:00+09:00
ロスアラモス国立研究所に設置されたスーパーコンピューター「Venado」
【画像出典】Los Alamos National Laboratory:
https://discover.lanl.gov/news/0415-venado


 
米エネルギー省(DOE)傘下の国立研究機関ロスアラモス国立研究所(LANL)は、去る4月15日(米中部時間)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)およびNVIDIAと共同で、最新スーパーコンピューターである「Venado」を設置したと発表した。
 
「Venadoは、国家安全保障と基礎研究を推進する最先端のスーパーコンピューティングに加わり、これらの課題に対する人工知能(AI)の統合を加速する」とロスアラモス国立研究所のトム・メイソン所長は述べている。また、米エネルギー省のデビッド・ターク副長官は「人工知能アプローチを取り入れる能力を持っているVenadoシステムが新しく意義深い成果をもたらすことを楽しみにしている」と述べた。さらに、「AIを駆使した強力なスーパーコンピューティングは、『次の科学発見の時代(next era of scientific discovery)』において、研究者に多大な影響を与えうる画期的な成果を出し、実世界の問題を解決することを可能とする」とヒューレット・パッカードのトリッシュ・ダムクロガー上級副社長は述べている。
 
「Venado」には大規模なコンピューティング操作をサポートするために、「NVIDIA Grace Hopper Superchip」が2,560個搭載されている。このスーパーチップは、従来のチップ技術よりも低コストかつ低消費電力で、1秒間に数百万の命令を実行でき、初期のスケールテストで「Venado」は、材料科学と高解像度天体物理学のシミュレーションにおいて顕著な結果を示したとのこと。また、ヒューレット・パッカードは、NVIDIAのチップと連携し、AIによる計算のニーズに合わせてシステム全体の性能を向上させるネットワーク「Slingshot 11」を提供した。
 
バイデン米政権は2022年より国立研究所の「建設と改修」に15億ドルの追加資金を投入しており、「科学施設をアップグレードし、インフラを近代化し、延期されたメンテナンス・プロジェクトに対処する」としている。
 
【出典】
https://discover.lanl.gov/news/0415-venado

https://www.nextgov.com/emerging-tech/2024/04/los-alamos-national-lab-unveils-new-supercomputer-primed-ai/395748/

https://www.nextgov.com/emerging-tech/2022/11/national-labs-receive-15b-funding-boost/379341/
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
ロシアの滑空爆弾がウクライナ防衛線を破壊 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fny2teise 2024-04-17T09:00:00+09:00
ロシア軍はウクライナの防空圏外から攻撃できる、大型滑空爆弾の使用を始めた。
【画像出典】Xhttps://twitter.com/nexta_tv/status/1766028334469722193/photo/1


 
2024年3月以来、ロシア軍はウクライナの防衛線を破壊するために強力な爆弾を使用し続けている。この超強力な兵器は、ソ連時代の旧式爆弾を滑空式に改造したものだ。
 
爆弾は「FAB-1500」と呼ばれ、総重量約1.5トンの半分は高性能爆薬である。この爆弾は、ウクライナ軍の防空網の範囲外である38マイル(約60km)離れた上空から、爆撃機によって投下される。攻撃はロシア軍の地上部隊が前進する直前に行われ、ウクライナ軍の防御部隊に壊滅的なダメージを与えているのだ。
 
東部ドネツク州からの最近の映像には、ウクライナ軍が司令部を置いていると考えられる火力発電所や工場への攻撃が映っている。たった一発のFAB-1500によって建物がほぼ全壊しており、その破壊力の大きさを物語っている。
 
ドネツク州の最前線、クラスノホリフカで戦う第46独立空挺旅団の兵士の一人は「以前の脅威は砲撃だけだった。現在は空爆も始まり、ロシア軍はFAB-1500を使い始めた。この爆弾の威力はすさまじい。普通の爆弾なら少しは慣れているが、FAB-1500はまさに地獄だ」と述べる。
 
ロシア軍はウクライナの防衛線に強力な火力を投入し、ウクライナ側の損害を増やしているが、まだ戦局を根本的に変えるほどの影響はない。しかしウクライナ情報部は、ここ数週間で、南部のヘルソンと北部のハルキウでもFAB-1500と思われる大型爆弾が使用されたと発表した。
 
2024年2月にロシアが奪回したアウディーイウカ(ドネツク州)での戦闘では、2日間でFAB-1500が250発も使用され、アウディーイウカ周辺のウクライナ陣地は完全に破壊された。一部の専門家は、「このような激しい攻撃が続いた場合、戦局が急変する可能性がある」と指摘する。
 
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の主任研究員、ジャスティン・ブロンク氏は「滑空爆弾にするための変更キットの製造が追いついていない状況はあるが、ソ連時代から製造された爆弾本体は大量にストックされている」と説明している。
 
ドネツク州など東部戦線では、ウクライナ軍の重要な陣地の位置がロシア側に把握されている。ウクライナ空軍は、ここ数週間でロシア軍のSu-34を数機撃墜したが、防空部隊は滑空爆弾の射程距離である38マイル(約60km)の範囲を防御する能力を持っていない。
 
米国から供与されたパトリオットシステムは、滑空爆弾に対抗できる唯一の防衛手段だが、数が限られている。さらに、使用するミサイルも、米国議会の追加支援の決定が遅れたために在庫不足だ。
 
ゼレンスキー大統領を含むウクライナの高官たちは、ロシアの空からの脅威に対処するため、長射程の防空兵器の必要性を訴えてきた。現在訓練中の、ウクライナ空軍のF-16戦闘機の投入は今年後半と考えられるが、これらの戦闘機が作戦に参加すればロシアの爆撃機を遠ざけることができるかもしれない。
 
以前、ロシア軍が集中砲火でウクライナ軍の陣地を一掃したように、現在のロシア軍は壊滅的な破壊力を持つ爆弾を、無尽蔵とも思える供給で使用している。その結果、ドネツク州のウクライナ軍は避難する場所もない状態に追い込まれているのだ。



【参考】
https://edition.cnn.com/2024/03/10/europe/russian-guided-bomb-ukraine-frontline-intl/index.html

https://www.businessinsider.com/russia-hit-ukraine-hundreds-of-glide-bombs-less-than-week-2024-3

 
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クライシスインテリジェンス管理者
中国、早期警戒機の高性能化を推進 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnjkekw8f 2024-04-16T15:00:00+09:00
中国海軍(PLAN)は早期警戒機の高性能化を急速に進めている。
【画像出典】Xhttps://twitter.com/THEEURASIATIMES/status/1773215275585851632/photo/1


 
長年にわたり、米海軍のE-2Dホークアイ(以下、ホークアイ)は早期警戒機(AEW)として、脅威を発見し、偵察するために活躍してきた。
 
見通し外の海上監視能力がネットワーク化されていることにより、広範囲の敵脅威を早期に発見することが可能だ。早期発見により、防衛や対処の準備時間を確保できるため、戦闘において味方部隊が有利になる。さらに、効果的な攻撃を計画し、敵を「追跡」「捕捉」「無力化」することができる。これが、早期警戒機ホークアイが何度も改修され長期運用される理由である。
 
ホークアイは長らくの間、早期警戒機として脅威を検知し追跡する任務を担ってきたが、最近ではデータリンク装置を搭載していることから、指揮統制局(指揮統制ノード)の役割も果たすようになってきた。現在、戦闘機、水上艦船、ドローン、そして人工衛星とリアルタイムでネットワーク化を行い、価値の高いデータを収集、処理、発信することが可能になっている。

 
<中国の早期警戒機>
近年、中国軍もKJ-200、KJ-500、KJ-600などの早期警戒機の性能向上に注力している。中国は一般的に、軍事装備の改修において米国の技術を模倣する傾向がある。そのため、早期警戒機についてもある程度の予測が可能だ。おそらく最新のKJ-600については、ホークアイのような指揮統制ノードへの改修が行われると予想されている。
 
中国政府の機関誌「環球時報」によると、最近の空母艦載機J-15の訓練には、早期警戒機KJ-600も参加したという。KJ-600は、打撃グループとネットワークを形成し、目標の電波源を探知して座標を特定。その後戦闘攻撃機(J-15)を誘導して目標の攻撃に成功したと報じられた。
 
米海軍のホークアイは、直径24フィート(約7.3m)の回転式レドームを備え、連続的に捜索(スキャン)を行うように設計されている。中国軍のKJ-200、KJ-500、そして新型のKJ-600も、ホークアイと似た24フィートのレドームを装備している。
 
中国海軍の早期警戒機のレーダー捜索能力やセンサーの感度がホークアイに匹敵するかは不明だが、設計仕様や技術構成、運用コンセプトについては、米海軍の装備を模倣しているのは確かだ。
 
最近ホークアイは、水平線を超える長距離目標をリモートの交戦によって撃破するシステムである海軍統合火器管制(NIFC-CA)において、「空中ノード」として頻繁に使用されている。米海軍の駆逐艦に搭載されているNIFC-CAは、艦載レーダーと火器管制システムのデータをホークアイにリンクさせ、作戦領域を拡大することに成功した。
 
中国海軍は、米海軍の持つ多目標データの同時処理、高度ネットワークなどの能力をKJ-600に統合しようとしている。そして、NIFC-CAのような交戦能力の取得を目指していると考えられる。


【参考】
https://warriormaven.com/china/chinas-new-kj-600-surveillance-plane-copycats-us-navy-hawkeye-technologies-tactics
 
https://armyrecognition.com/defense_news_march_2024_global_security_army_industry/china_tests_new_kj-600_tactical_airborne_early_warning_aircraft.html#google_vignette
 
https://www.eurasiantimes.com/chinas-carrier-capable-kj-600-aewc-aircraft-resembling/
 
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
ラファエル社、「アイアン・ビーム」2025年の納入を目指す https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnip6tb8k 2024-04-16T09:00:00+09:00
ラファエル社の「アイアン・ビーム」 
【画像出典】X:https://twitter.com/TokyoDAR/status/1514630942840610818/photo/1


 
2023年10月7日からイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争が激化している。そのような中、イスラエルの防衛産業において主要企業であるラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ社の幹部によれば「地上配備型のレーザー防空システム、アイアン・ビームを2025年に納入する予定だ」という。
 
アイアン・ビームについては今年の2月、イスラエル国防省の上級幹部ダニー・ゴールド准将(退役)が「イスラエルのレーザー防空システムが配備されれば、ロシアのウクライナ侵攻に使われているイラン製ドローンを撃墜できるだろう」と述べている。同氏は非常に高度なレーザーシステムを使用した実験成功について示したうえで、「我々は迫撃砲、ロケット、そしてウクライナに送られているイランのUAV(無人航空機)に対しても発射試験を行ってきた」と明かした。
 
また、退任したイスラエル国防軍のアビブ・コハビ参謀総長は、エルサレム・ポスト紙に「今後2年以内に、この装備品の有効性を確認するためにガザ地区の国境沿いにシステムを配備する予定だ」と説明。2022年10月には、ラファエル社の役員がBreaking Defenseに対し、「アイアン・ビームは2~3年で準備が整う」と述べた。
 
ラファエル社は、イスラエルの主力戦車「メルカバ」や装甲兵員輸送車に使用されているトロフィー(Trophy)アクティブ防護システム、アイアンドーム(Iron Dome)地対空ミサイルなどの開発を行っており、紛争において中心的な役割を果たしている。今回の紛争におけるアイアンドームの迎撃に関して、イスラエルはデータを公表していない。しかし、2021年にガザ地区からイスラエルに向けて発射された約3,350発のロケット弾について、イスラエル空軍はアイアンドームによる迎撃率を「約9割」と述べている。
 
またイスラエルの戦車や装甲兵員輸送車に使用されるトロフィーアクティブ防護システムも、紛争において効果を発揮。ハマスはイスラエルの車両に対して、さまざまな種類の対戦車火器を積極的に使用してきた。ハマスがソーシャルメディア上に公開した映像には、ガザ地区南端のカーン・ユニス(Khan Yunis)とその周辺の市街地を高速で走り抜けるメルカバ戦車がトロフィーを使用している様子が確認できる。建造物が密集した市街地で活動する戦車やその他の車両にとって、トロフィーの価値は大きい。都市部は敵にとって射撃に有利な場所や堅固なカバーが豊富な地域となっており、通過する車両を非常に近い距離で待ち伏せ、攻撃することが可能だ。大きな危険が伴うため、トロフィーはそのリスクを減らすことが期待できる。
 
アイアン・ビーム以外のラファエル社の防空システムとして、今年の1月にイスラエル国防省と同社はスパイダー(Spyder)防空システムの試験を完了したと述べた。この防衛システムはすでに世界中の多くの軍隊で運用されており、航空機、ヘリコプター、さらには戦術弾道ミサイル(TBM)など、さまざまな脅威に対する防空能力を提供している。今回の試験では、「オールインワン」と呼ばれる防空システムに必要なさまざまな機能を1台の車両に融合したタイプをテストしたと思われ、目標とされるUAVの攻撃に正確に迎撃したと発表された。
 
ラファエル社のマーケティング担当であるギディ・ワイス氏は今回の試験について、ヒズボラの無人機や無人航空機、フーシ派の無人機や巡航ミサイルからイスラエルを守る必要性を強調。アイアン・ビームも含め、今後のイスラエルの多層的な防空システムは一層発展するものと思われる。



【参考】
https://breakingdefense.com/2024/03/rafael-expects-iron-beam-laser-to-be-active-in-2025-exec/
 
https://www.defensenews.com/industry/2024/01/10/rafael-intercepts-drone-with-newly-combined-spyder-air-defense-systems/
 
https://www.twz.com/merkava-tanks-trophy-protection-system-showcased-in-hamas-video
 
https://www.jpost.com/israel-news/article-781623
 
https://www.jpost.com/breaking-news/article-756455
 
https://www.asahi.com/articles/ASP5L6J11P5LUHBI01S.html

 
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】英国防省がパイロット訓練用VRに54万ポンド(約1億円)相当の融資を実施 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn6hu65ov 2024-04-15T16:40:00+09:00
軍事訓練への活用が進むVRやメタバース空間
【画像出典】Airforce Technology:
https://www.airforce-technology.com/news/uk-ministry-of-defence-issues-dasa-loans-for-pilot-vr-technology/?cf-view
 
防衛セクターにおけるイノベーション強化を目的として、英国国防省(MoD)は、防衛安全保障アクセラレーター(DASA)を通じて、英ニューカッスルを拠点とする中小企業(SME)「VRAI」社に対して防衛イノベーション融資を供与した。英国空軍(RAF)のパイロット訓練を強化することを目的とした本融資により、VRAIはその高度なデータ収集および分析テクノロジーの開発と商品化をさらに加速するとのこと。
 
VRAIは、よりパーソナライズされた訓練体験と客観的なフィードバックを訓練生に提供することを目的としており、今後、軍用パイロットの訓練に関連する時間とコストを削減できる可能性がある。また、これは現在、英国空軍の高速ジェット訓練プログラムに大幅な遅延が発生している中で[注]、喫緊の課題ともされている。

54万4742ポンド(約1億4000万円)相当の今次融資を受け、VRAIは機械学習アルゴリズムを活用して、訓練データから得られる「実用的なインサイト(actionable insights)」(単に情報を提供するだけでなく、具体的なアクションや意思決定を促すような洞察)を強化することとなる。このステップは、訓練の成果を向上させ、インストラクターがより付加価値の高いタスクに集中できるようにすることを目的としている。国防省のリリースによると、この資金は操縦技術(テクニカルスキル)以外でパイロットが安全な航空航法を確保するために不可欠な非技術的スキル(ノンテクニカルスキル)に特化した形での開発をサポートするとのこと。
 
VRAIのテクノロジーは、当初DASAの資金提供によって支援されており、仮想現実(VR)と高度なデータ分析を組み合わせて、パイロット訓練生のパフォーマンスを測定および予測する。このアプローチは、インストラクターの数や時間によって制約されることが多い、従来の伝統的なパイロットの訓練方法に関連する課題に対処することを目指している。
 
この資金提供イニシアチブは、防衛分野における中小企業の成長を支援するためのDASAおよび「Innovate UK」(英国におけるイノベーション推進のための公的助成機関)による広範な取り組みの一環である。防衛イノベーション融資は、技術開発において、より成熟した段階にある企業を支援するために特別に設計されており、イノベーションと商業化の間のギャップ(いわゆる「死の谷(Valley of Death)」)を埋めることを目的としている。
 
[注]英軍のパイロット養成に使用されている練習機「Hawk T2」のエンジン・トラブルなどにより、本来2、3年で完了するプログラムが、現在では最大8年もかかっているとの問題
 
※1ポンド=190円換算
 
【出典】
https://www.airforce-technology.com/news/uk-ministry-of-defence-issues-dasa-loans-for-pilot-vr-technology/?cf-view
https://www.gov.uk/government/case-studies/airmanship-data-capture-technology-flies-high-with-a-defence-innovation-loan
https://www.shephardmedia.com/news/training-simulation/royal-air-force-opens-hawk-maintainer-facility/
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クライシスインテリジェンス管理者
加速する中国の空母増強計画 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn658nfxf 2024-04-15T09:00:00+09:00
台湾海峡付近を航行する空母「山東」
2030年までに中国の空母は5隻体制になる可能性がある。
  【画像出典】Xhttps://twitter.com/sentdefender/status/1662360025233256448/photo/1


 
現在、中国海軍(以下、PLAN)は「遼寧」と「山東」の2隻の空母を運用しているが、2030年までに5隻の空母を保有する可能性がある。昨今、中国がインド太平洋海域での勢力拡大のため、基盤構築の兆候を示しているのだ。
 
中国の空母開発は、ソ連時代に退役した空母「遼寧」の大改修から始まり、国産の「山東」、そして電磁カタパルトを採用した最新の「福建」へと発展した。この急速な空母建造は世界最強の米海軍と肩を並べ、いずれはそれを上回るという中国の野心が反映されている。
 
過去10年間、中国は海軍力を急速に拡大し、艦船の数では米国を上回る大規模艦隊を有している。米国防総省の「2023年中国軍事力報告書」によると、艦船の総数は2025年までに395隻に達すると予想される。一方、2030年時点での米海軍の予想艦船数は約300隻だ。艦船の総数が中国より100隻近く少ないのは懸念材料であるが、作戦能力においては米海軍が優勢であると考えられている。
 
PLANに欠けている装備は空母である。中国は現在2隻の空母を保有しており、「福建」という3隻目の空母を準備中であるが、対する米国は11隻を運用している。しかし、米海軍研究所の分析によれば、2030年までに中国は最大5隻の空母と10隻の戦略潜水艦(核弾頭搭載)を保有できる建造能力と財源を確保しているという。
 

<1番艦「遼寧」>
中国は1980年代から空母の技術研究のために、中古の空母を計4隻購入している。これらはソ連時代のミンスク、キエフ、ヴァリャーグとオーストラリアから入手したメルボルン(英国建造)だ。最終的に、ヴァリャーグを大改修し遼寧として再生。PLAN初の空母を完成させた。この船は、1985年に当時ソ連領だったウクライナのムィコラーイウで竣工されたが、1991年のソビエト連邦崩壊とともに建造は中止された。1998年、中国はウクライナからこの空母を2,000万ドル(約30億円)と言う破格の値段で購入した。
 
2008年に遼寧の大改修が始まり、中国のエンジニアはこの空母に348型アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーとシーイーグル3次元レーダーを搭載。2011年からは国産のJ-15戦闘機を使った各種の飛行試験が実施された。現在、遼寧の艦載機はJ-15戦闘機(24機)、Z-18F対潜戦ヘリコプター(6機)、Z-9C救難ヘリコプター(2機)、Z-18J早期警戒ヘリコプター(4機)となっている。
 

 <2番艦「山東」> 
中国2隻目の空母は、初の国産となる山東である。山東は実戦を想定しPLANが設計しており、遼寧から大幅に進化した。遼寧はソビエト連邦で設計され、低温海域での運用を前提として艦載機を全て艦内に格納するタイプである。一方、山東は中国の周辺海域が想定されており、艦載機の露天係止が可能で航空機の運用が容易だ。
 
建造は大連造船所が担当し、2013年から約2年間で船体構造(キール)を完成させた。2019年12月17日に就役し、2023年4月にはフィリピン海で行われた大規模演習「統一鋭剣」を含む様々な軍事訓練に参加している。動力には8基のボイラーと4基の蒸気タービンを用いており、最大速度は遼寧の29ノット(53.7km/h)から31ノット(55km/h)に向上している。
 

 <3番艦「福建」> 
福建は上海市にある江南造船所で建造され、2022年に進水した。遼寧と山東がスキージャンプ式で航空機を発艦させるのに対し、福建は電磁カタパルトを使用する。2024年には本格的な海上試験が予定されている。この空母は2番艦より装備面では進化しているが、米空母と比較するとサイズは約80%で、原子力ではなく通常推進であるため、積載能力と航続距離が劣るという。
 
新型空母の場合、試運転の全プロセスに1年以上かかるのが普通である。初の国産空母となった山東は、完成から就役まで19ヶ月を要した。福建が就役すれば、米国のジェラルド・R・フォード級空母とともに、最新の電磁式カタパルト(EMALS)を搭載した世界で唯一の艦船となる。
 
EMALSは、スキージャンプ式では不可能だった多くの航空機に最大兵装(爆弾、ミサイル等)を搭載して発進させることが可能だ。この能力は、中国が台湾への侵攻作戦を行う際の重要な戦力となる。
 
将来PLANが空母5隻を運用した場合、中国の戦力投射能力は現在と比べ飛躍的に増強される。これは、アジア地域や国際社会の安定に大きな影響を及ぼす可能性が高い。今後の展開には、慎重な分析を行うとともに同盟国間の連携をさらに強化する必要があると考えられる。
 
※1ドル=151円換算



【参考】
https://nationalinterest.org/blog/buzz/china-wants-big-fleet-5-aircraft-carriers-209791
 
https://www.eurasiantimes.com/six-aircraft-carrier-by-2035-chinas-ambitious-plan/#google_vignette

 
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クライシスインテリジェンス管理者
岸田総理による米議会演説に関するテキスト分析: 「総立ち拍手」の裏に隠された思惑とは https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnoe54pd5 2024-04-12T18:56:00+09:00
米上下両院合同会議にて演説する岸田総理
【画像出典】首相官邸:
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202404/11usa.html
 
岸田文雄首相は去る4月11日午前(日本時間12日未明)、米ワシントンの米議会上下両院合同会議で「未来に向けて〜我々のグローバルパートナーシップ〜(For the Future: Our Global Partnership)」と題して演説を行った[1]。
 
同演説に対し、メディアは以下のような見出しで報じている:

●岸田首相演説に高評価 米議会、総立ち拍手も(時事通信)[2]
●岸田首相の米議会演説、ジョークは好評 ウクライナでは温度差あらわ(朝日新聞)[3]  

また、より個人的見解の表出を見出しやすい「X」上では、以下のように好意的なポストも目立つ:

●Japanese Prime Minister Fumio Kishida’s speech to the Joint Session of Congress was clear and powerful ... Now the House must pass aid to Israel and Ukraine in the spirit of this great speech.(日本の岸田文雄首相の上下両院合同会議での演説は明快で力強いものだった。(中略)今、下院はこの素晴らしい演説の精神にのっとり、イスラエルとウクライナへの援助を可決しなければならない)(ニュート・ギングリッチ/元米下院議長)[4]
●Nice speech by Kishida to Congress, which acknowledges that there is self-doubt and exhaustion among Americans for upholding the international order single-handedly.(岸田総理の議会での素晴らしい演説。国際秩序を単独で維持することに対するアメリカ人の自信喪失と疲労感を認めている。「米国が援助なしに独力で全てをこなすことを期待されるべきではない」と語った)(KEN MORIYASU/Nikkei Asia diplomatic correspondent)[5]
 
米国の議会で演説を行った日本の総理大臣は以下のとおりで、今回の岸田総理で5人目となる:

●1954年、吉田茂総理大臣が米議会上院で日本の総理大臣として初めて演説を行う
●1957年、岸信介総理大臣が上院と下院で個別に演説を行う
●1961年、池田勇人総理大臣が下院で演説
●2015年、安倍晋三総理大臣が上下両院合同会議で日本の総理として初めて演説を行う
 
 
米国上院で演説する岸田首相
【画像出典】内閣広報室:
https://www.japan.go.jp/tomodachi/2015/spring2015/japanese_prime_ministers_who_have.html
 
では、こうした歴代の総理による演説との比較において、今回の岸田総理による演説はどのように分析できるのか。演説という膨大なテキストデータから定量的に情報を抽出する自然言語処理(テキストマイニング)をつうじて、印象論を超えた客観的な分析を試みたところ、まず各総理大臣による演説に関する分析は以下のとおりであった:

●1954年の吉田茂総理大臣による上院での演説に関するデータを入手することはできなかったので、取り急ぎその3年前の1951年に同総理大臣によってなされたサンフランシスコ平和会議における受諾演説にて、出現頻度の多いキーワードをワードクラウドで抽出したところ、以下のとおりであった[6]:  

●1957年の岸信介総理大臣による上院・下院での演説についてもデータがなかったので、同年、ナショナルプレスクラブにおいてなされた演説データを代用したところ、その結果は以下のとおりであった[7]:
 
●1961年の池田勇人総理大臣による下院での演説(挨拶)については、データがあったので、演説そのものを分析したところ、以下のとおりであった[8]:
 
 
●2015年の安倍総理による上下両院合同会議での「希望の同盟へ」として知られる演説については以下のとおり[9]:
 

●そして最後に、今回の岸田総理による演説であるが、ワードクラウドでの抽出結果は以下のとおりであった[10]:
 
演説においてよく使われている(スコアが高い)キーワードを抽出し、その値に応じて大きさを図示しただけの単純な分析ではあるが、歴代総理による演説と今回の岸田総理による演説を比較し、何か気づかないだろうか。
 
それは、安倍総理までの演説では「われわれ/日本」といった我が国が主体となるテキストが多いのに対して、岸田総理の演説ではそれが「米国」となっているのである。
 
米国に向けたメッセージという意味で、これら歴代総理の演説を比較すると、日米同盟をさらに深化させるという意味においては、自然言語処理上もその決意が表れているともいえるが、他方で、果たして我が国の主体性はそこにあると言えるのだろうか。
 
岸田総理が訪米する直前に米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」によって「アーミテージ・ナイ・レポート2024」が発表されたが、そこには我が国への要望が明確に述べられている。たとえば、以下のような記述である[11]:
 
「日本は、抑止力を維持するために必要な能力を迅速に提供することを危険にさらすような防衛要件に対して、国産での解決策を追求するという本能に抗うべきである。競争力を持ち、最終的に日米が必要とする能力を提供するためには、日本の産業界は、自衛隊のための能力構築に専念するのをやめ、外国の防衛関連企業との提携を含め、国際市場を受け入れる必要がある」

 

4月9日にCSIS関係者らとの夕食会に参加した上川陽子外務大臣(中央)
【画像出典】外務省:https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/pageit_000001_00494.html
 
我が国ではいわゆる「安保三文書」が改訂され、今後5年で防衛関係費は倍増する中で、安全保障産業はますます活性化し、防衛イノベーションも加速するといえよう。こうした我が国の安全保障政策の転換と相前後して、米国や英国との同分野における協力関係も強化されている。具体的には、日英伊による次期戦闘機共同開発協力「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」や、セキュリティクリアランスの導入といった動きである。これらの動きは、一見すると、防衛イノベーションでは先端を走る米国や英国の技術を取り込むことにつながるともいえるが、他方でその逆の見方もあるのではないだろうか。すなわち、これまでG7で唯一セキュリティクリアランスを未整備であった我が国は、他国からすると「情報の非対称性」という強み(我が国が他国の機密情報にアクセスできないのと同じように、他国も我が国の機密情報にアクセスできない)をもっていたとするならば、昨今の動きはそうした防壁をなくすということを意味するのではないか。
 
NSBT Japanチーフ・アナリスト 原田 大靖

【出典】
[1] https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/pageit_000001_00506.html
[2] https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041200241&g=int
[3] https://www.asahi.com/articles/ASS4C74C8S4CUHBI03BM.html
[4] https://x.com/newtgingrich/status/1778513938306486293
[5] https://x.com/kenmoriyasu/status/1778458696290332938
[6] https://worldjpn.net/documents/texts/JPUS/19510907.S1J.html
[7] https://worldjpn.net/documents/texts/exdpm/19570621.S1J.html
[8] https://worldjpn.net/documents/texts/exdpm/19610622.S2J.html
[9] https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001149.html
[10] https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2024/0411enzetsu.html
[11] https://www.csis.org/analysis/us-japan-alliance-2024-toward-integrated-alliance
 
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnkjif936 2024-04-12T15:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 紅海で起きている海底ケーブルの危機とは https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnw5djpco 2024-04-12T09:00:00+09:00
紅海
【画像出典】X:https://pbs.twimg.com/media/GK0vnAyWoAAyyzO?format=jpg&name=small


 
現在、紅海で発生している危機は、商船に対するフーシ派の攻撃とイランの代理戦略によって明確に浮き彫りになった。ただ、紅海の海底ケーブルへの意図的な損傷と、それが世界経済および欧州連合(EU)における米国同盟国の経済安全保障に与える影響については、あまり注目されていない。
 
紅海の海底ケーブルの戦略的重要性は、もっと強調するべきである。海底ケーブルは、ヨーロッパとアジア間のデジタル通信と貿易のバックボーンとして機能しており、敵対する攻撃者の標的となっているからだ。
 
経済的な観点から見ても、海底ケーブルネットワークの保護は不可欠である。EUに拠点を置く企業の70%以上がクラウドコンピューティングなどのオンラインサービスに依存しているため、高速で信頼性の高い海底ケーブルネットワークの混乱が長期化すれば、EUの経済安全保障と世界貿易に重大な影響を及ぼすことは明らかである。高度にデジタル化されたヨーロッパ社会におけるソーシャルネットワークの中心的な役割を考えると、海底ケーブルとその着陸局が攻撃にさらされた場合、社会生活は深刻に混乱する可能性が高い。
 
混乱が長期化すれば、EU​​全体の安全保障に悲惨な結果をもたらすと推測される。海底ケーブルの意図的な損傷に対する脆弱性は、フーシ派の商船攻撃と同じぐらい重大な懸念事項なのだ。
 
紅海、スエズ運河、地中海、インド洋にまたがる海底ケーブルは、10本のケーブルシステムが集合して、ヨーロッパ本土と南アジアおよび東アジアの貿易圏との間のデジタル接続における中核を形成している。最近では、EUの限定的な修復能力とケーブルプロジェクトの政治化が問題となり、物議を醸しているのだ。
 
EUの限定的な修復能力に関しては、コスト削減と効率向上を図るという業界標準の一環として、修理作業が外部パートナーに委託されているのが現状だ。EUと東アジア・南アジアを結ぶ10のケーブルネットワークを対象とする地中海ケーブル保守協定 (MECMA)に基づき、修理はイタリアとフランスに駐留する2隻のケーブル船によって行われている。ただし地理的範囲が広いため、修復能力はあまり高くはない。同時攻撃によって、停止が長期化する可能性は十分に考えられる。
 
海底ケーブルはさまざまな手段で狙われているが、物理的な破壊がもっとも一般的だ。アンカーのような即席の装置を使用して民間船舶を武器化すれば、意図的に大きな損傷を与えることができる。この攻撃は費用対効果が高く、高度な海底機能は必要ない。
 
物理的な破壊手段のもうひとつは、水中爆発物の使用だ。比較的簡単に実行できるため、さまざまな攻撃者に注意する必要がある。この方法には海上の即席爆発装置の配備が含まれており、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)海軍支部は、ホルムズ海峡における費用対効果の高い戦略と考えて、いつでも実行できる準備がある。
 
現時点ではフーシ派指導部やイラン政府がそのような行動を起こす意図を示していない。だからといって、その危険性を軽視するのは賢明ではない。



【参考】        
https://nationalinterest.org/blog/techland-when-great-power-competition-meets-digital-world/navigating-depths-strategic-battle
 
https://www.forbes.com/sites/zacharyfolk/2024/03/04/four-fiber-optic-cables-damaged-in-red-sea-heres-what-we-know/?sh=34ca9e5455b1
 
https://www.corriere.it/tecnologia/24_marzo_06/perche-il-mar-rosso-e-il-punto-piu-vulnerabile-di-internet-gli-attacchi-houti-e-i-4-cavi-sottomarini-danneggiati-6cb62233-a3d3-4ca9-b3d6-0d4451653xlk.shtml
 
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-68478828
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クライシスインテリジェンス管理者
【シンクタンク情報】米CSISが「アーミテージ・ナイ・レポート2024」を発表 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnhnjcutd 2024-04-11T17:50:00+09:00
CSIS関係者らとの夕食会に参加した上川陽子外務大臣
【画像出典】外務省:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/pageit_000001_00494.html  
米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が去る4月4日、日米同盟に関する報告書「より統合された同盟関係への移行(The U.S.-Japan Alliance in 2024: Toward an Integrated Alliance)」(いわゆる「アーミテージ・ナイ・レポート」)を発表した。
 
冒頭、同報告書では、以下のように述べている:
 
●2000年、リチャード・アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国務次官補は超党派のグループを結成し、大統領選挙前に日米同盟のビジョンを策定した。それ以来、2007年、2012年、2018年、2020年に報告書を提出し、この超党派の伝統を築いてきた。
 
●今日、日米両国が直面している戦略的環境と、それに対処するために必要な行動の緊急性は、さらに強力な行動を求めている。シリーズ第6弾となる本報告書は、自由で開かれた国際秩序を維持するため、経済・安全保障の両分野にわたってより統合された同盟関係への動きを促すものである。
 
その上で、とりわけ防衛産業については、「安全保障同盟の推進(Advancing the Security Alliance)」との項目において次のように述べている:
 
防衛産業と技術協力を優先せよ
ウクライナ戦争は、同盟国における防衛産業能力の重要性を浮き彫りにした。革新的な日本の防衛産業を支援することは米国の利益であり、日本が防衛装備品の輸出規制を緩和したことは、まだ不十分ではあるが、協力を拡大する好機である。そのためには双方の考え方(mindsets)を調整する必要がある。
 
たとえば、米国防総省の指導者は、既存の軍需品ラインのライセンス生産拡大から新しい技術やシステムの共同開発に至るまで、日本との協力プログラムを優先すべきである。また、日本が進めてきた情報セキュリティの進展を反映させるため、技術公開ポリシーを合理化すべきである。
 
さらに、米国は、AUKUSの「第二の柱(Pillar Two)」(訳注:豪州の原子力潜水艦配備に向けた協力を目指す「第一の柱」に対して、「第二の柱」は先端軍事技術の共同開発を目指す)の下でのプロジェクトを含め、他のパートナーとの日本の協力を支援すべきである。
 
その一環として、日本は、抑止力を維持するために必要な能力を迅速に提供することを危険にさらすような防衛要件に対して、国産での解決策を追求するという本能に抗うべきである。競争力を持ち、最終的に日米が必要とする能力を提供するためには、日本の産業界は、自衛隊のための能力構築に専念するのをやめ、外国の防衛関連企業との提携を含め、国際市場を受け入れる必要がある。
 
【出典】
https://www.csis.org/analysis/us-japan-alliance-2024-toward-integrated-alliance
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クライシスインテリジェンス管理者
シリーズ 新領域と技術 (1)技術の発展と領域の拡大 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fng6488vm 2024-04-11T15:00:00+09:00 シリーズ 新領域と技術
(1)技術の発展と領域の拡大
 
NSBTシニアアナリスト 上髙原 賢志
 
1 はじめに
防衛省が「多次元統合防衛力」を構築するという方針を2018年の防衛大綱で打出してから6年が経過した。これを受けた中期防衛力整備計画では、大きな特徴として、「領域」という概念を打出し、宇宙・サイバー・電磁波領域を「新領域」としている。そして、この「新領域」を中心に重点整備する方向性が打出された。「新領域」という言葉は、今や安全保障分野に限らず教育界や経済界でも多用されており、ただ単に新しい事業や試みが全て新領域と謳っているところも少なくない。なぜなら、国際的に合意された「ドメイン(領域)」の定義がないからである。
 
しかし現在、軍事分野において「新領域」とされているものは、技術の進化・発展と密接に関係している。「新領域=戦闘空間」として提唱されている領域は技術発展の結果によって出現したものだ。したがって、今後、我々が想像し得ないような領域が出現する可能性がある。
 
本稿では、「新領域と技術」について、毎回サブテーマを設定して技術との関連性について解説するとともに、今後の展望について述べていきたい。第1回は、「技術の発展と領域の拡大」をサブテーマに、技術発展と領域拡大の歴史について簡単に触れたのちに、現在戦闘空間として定義されている領域の特徴を物理学・社会科学的観点から述べていく。
 

2 軍事技術の発展と領域
(1)人間が活動できる物理領域と技術発展
「人類の歴史は戦争の歴史であり、戦争の在り方は科学技術の変化に伴って変化してきた。」と鈴木一人は述べている。
[i] 長い歴史の中で、人類は様々な技術を習得してきた。その多くは、その技術を使用しなければ人間ができないことであった。例えば「火」だ。人間が自由に扱うことができるようになった最初の危険物ではないだろうか。そして、「船」。人間の活動範囲を大きく変え、食生活までも変えることになった画期的な技術である。
 
軍事技術も人類の技術と並行して発展していった。特に第1次世界大戦期における航空機(飛行船)と潜水艦の出現は、これまでの人間の活動領域を大幅に拡張した。この2大兵器の出現により、実空間(物理空間)として人間が活動できる領域の残りは、宇宙と地中だけになったのである。宇宙は第2次世界大戦以降、新たな活動領域となっている。今や宇宙は現代戦を語るうえで不可欠である。宇宙については次回以降述べていく。地中はSF人形劇サンダーバード2号の救助メカ「ジェットモグラ」
[ii] のように自由自在に移動可能なビークルは存在しないが、日本は東京都内の入り組んだ地下鉄網を構築できる世界トップクラスのトンネル技術を保有している。今後、地下シェルターの建設等で地中が戦闘領域として注目されるかもしれない。
 
(2)従来領域(陸海空)と宇宙領域
第2次世界大戦以降に人類が到達し、「ある程度」自在に活動できる領域として「宇宙」がある。旧ソ連が世界で初めて人工衛星「スプートニク」を打上げてから本格的な利用が始まった。宇宙は、空や海中と同様に、初期は軍事利用が主であった。宇宙空間の軍事的価値に関しては、4つの学派がある。
[iii] 詳細は文献を参考にしていただきたいが、軍事利用が主だった時代から商用利用と並行して発展していた時代を経て、今は商用目的での打上げがブームとなっている。その一方で、自社の衛星通信網を保有するイーロン・マスク氏がウクライナからの衛星通信利用要請に応じなかった。[iv] 民間企業の意向で、国家間の紛争の戦局に影響を与える時代となっているのだ。
  
宇宙領域は、従来領域(陸海空)と比較して、領域への到達の難しさ及び人間が自由に活動できる環境でないことから、衛星を中心とした領域となっている。衛星は通信衛星の他、光学、電波等センサー衛星が主である。一方、現在米国を中心とした「アルテミス計画」
[v] が進行中である。この計画の目標が成功すれば月周回のゲートウェイが建設され、より宇宙の深部に人類が活動することが可能となる。ゲートウェイが建設されると、宇宙領域の役割はより一層重要になると考える。
 
(3)仮想空間(サイバー領域)の出現
第2次世界大戦以降、仮想空間とは、「一般的にはネットワーク上で人々が現実世界のように交流を持ったり社会的な営みを行ったりする場であることを物理的な空間にたとえた言葉」と定義されている。
[vi] 1967年にARPA(DARPAの前身組織)が開発したARPAnetが最初の仮想空間だとされる。この技術は、米国の核ミサイルの抗たん性を確保するために開発されたとする説がこれまで一般的であったが、最近は学術研究が目的であったとする説が主流である。[vii]
 
物理領域と仮想領域の特徴比較は表1のとおり。この表では、比較項目として、物理領域と仮想領域の差が顕著な項目を抽出した。

 
表1 物理領域と仮想領域の特徴比較
  物理領域(従来+宇宙) 仮想領域(サイバー)
領域の特性 物理的空間 仮想的空間
(電力なしでは存在しない)
主な物理法則 質量を有する物体の移動に係る法則 電気信号または光に係る法則
国境の概念 無(但し、国家が管理するネットワークはある)
物資の移動 物質を輸送手段等として日常的に広く利用 物質の輸送は不可能
天象・気象の影響 無(但し、雷害による影響を除く)
見通し距離 領域毎に異なる 到達距離としては無限
帰属の特定 一般的に容易(宇宙はやや困難) 国外からの場合はかなり困難
日本の安全保障における活動範囲 日本国近傍 国が管理するネットワーク内
 
サイバー空間の最大の特徴は、空間内の物質[viii] 移動が不可能なことだ。しかしながら、電気信号を送受し輸送装置を遠隔で操作することで、間接的に物質輸送は可能である。もう1つ重要な特徴は、帰属の特定(いわゆるアトリビューション[ix])が困難なことである。以前は国外からの攻撃の場合、大まかな攻撃元を推定していたが特定するまでには至っていなかった。最近は技術の向上により、パブリック・アトリビューション[x] が活発に行われている。
 
表2 従来領域(陸海空)と新領域(宇宙・サイバー)の特徴比較
  従来領域(陸海空) 新領域(宇宙・サイバー)
空間の特性 物理的空間 物理的空間と仮想空間
国境の概念 基本的に無
(国際公共財、サイバーについては一部国家が管理しているネットワークもある)
領域内での人間活動 輸送手段等として日常的に広く利用 極めて限定的
利用に係る国際的枠組み 有(多) 有(少)
活動に要するコスト 小~大 宇宙:極大
サイバー:小~大
帰属の特定 容易な場合が多い 宇宙、サイバーともに困難

(4)先端技術と新領域
戦闘空間としての従来領域と新領域(宇宙・サイバー)とを比較した最も大きな特徴は、境界(国境)概念がないことだ。この点が従来領域と大きく異なる点である。現在認知など、様々ある戦闘上考慮すべき要素が「領域」として扱われることが多い。「認知」も境界概念がない要素(領域)である。これらは、技術の発展により人間が制御できるようになった要素だ。宇宙は、当時の先端技術により物理的に存在しながら到達できなかった領域である。そしてサイバーは、人間が先端技術により作り出した領域だ。一方で、深海や地中など、まだ人間が自由に制御(到達)できていない物理空間もある。今後、新たに出現する先端技術により、想像もし得ない領域が生み出されるかもしれない。
 
(5)電磁波は領域か
電磁波
[xi](EMS:Electronic Magnetic Spectrum)は、従来領域(陸海空)や宇宙領域で、戦闘において様々な「手段」として利用されている。例えば、通信、レーダー等の電波・光波によるセンシング、物体の同定の他、敵のセンシングシステムを妨害する電子戦(対処兵器)において使用されている。通信やセンシングは従来領域(陸海空)や宇宙では必要不可欠である。サイバー空間も通信ネットワークの構成により形成される。通信ネットワークは、以前は物理回線(メタル・光ファイバー等)によって形成されていたが昨今はWi-Fi、Bluetooth等、電波(電磁波)もネットワーク構成上重要な手段である。
  
このように、電磁波は領域で様々な活動を行うための手段と考えるべきである。米国は、2020年10月に発行した電磁スペクトラム優勢戦略において、電磁スペクトラムは領域ではなく、軍事作戦や情報活動を支援するものであると記述している。
[xii] また、英国では情報環境に支えられた5つの作戦領域として、その中の1つに「電磁波とサイバー」を領域としている。[xiii]
 
3 領域とは
前述したとおり、国際的に合意された「ドメイン=領域」の定義はない。各国で共通しているのは、軍や部隊が活動する空間や環境を領域としていることだ。この定義から、陸海空といった従来から存在する空間や技術の進展によって活動可能となった宇宙、そして仮想空間としてのサイバーは領域である。その他、国によって考え方が異なるが、英国のように、①認知、心理、情報といった能力に関するもの、②外交、経済等、③民間(民衆)等も領域として考慮している国もある。
[xiv]
 
本稿では、技術が領域及び軍事作戦に与える影響について述べていく予定である。よって、今後、ドメイン=領域として、従来領域を陸海空、新領域を宇宙、サイバーとし、電磁波は全ての領域に共通する環境、手段とする。また、認知等、他の要素についても今後考察していく。(了)
 
[i] 鈴木一人. "安全保障の空間的変容". 国際問題 No.658, 2017, 4.
[ii] “ジェットモグラ”.ピクシブ百科事典. https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A2%E3%82%B0%E3%83%A9(参照2024-03-26)
[iii] 福島康仁,「宇宙空間の軍事的価値をめぐる議論の潮流」,防衛研究所紀要第15巻第2号,P51,2013年2月
[iv] “イーロン・マスク氏衛星通信網の利用ウクライナの要請応じず",NHK NEWS WEB, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230909/k10014189921000.html, (参照2024-03-26)
[vi] “サイバースペース". https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9(参照2024-03-26)
[vii] “インターネットことはじめ 第1回インターネットの先駆け、ARPAnetの始まり”. https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No66/0320.html(参照2024-03-26)
[viii] 物質とは、「場所をとり、一定の量(mass)をもつもののことであり、物が質量と体積を持っていれば物質である。」, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E8%B3%AA (参照2024-03-26)
[ix] 「行為の因果関係を明らかにすること、サイバー攻撃の攻撃者を特定すること。」,“安全保障用語", https://dictionary.channelj.co.jp/2018/18101204/ (参照2024-03-27)
[x] パブリック・アトリビューションとは、「米国、英国などは、国家による不正なサイバー活動を抑止するため、攻撃実行者と背後にいる国家機関を特定・公表する取組をこれまで以上に活発に実施しており、中国、ロシア及び北朝鮮の国家的関与を指摘する活動」,”サイバー空間における驚異の概況2021”,P8,公安調査庁
[xi] 電磁波とは、電場と磁場の変化を伝搬する波(波動)であるとともに、粒子の性質を併せ持つ。軍事ではIR、UVや電波の他、レーザーも電磁波の一種である。
[xii] Department of Defense, Electromagnetic Spectrum Superiority Strategy, 2020, p.3.
[xiii] James Black, Alice Lynch, Kristian Gustafson, David Blagden, Pauline Paillé, Fiona Quimbre ,“Multi-Domain Integration in Defence,Conceptual Approaches and Lessons from Russia, China, Iran and North Korea", RAND Reserch Report, p6, Jan20. 2020
[xiv] Ibid p4
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn233uvar 2024-04-11T12:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 英国企業、IRステルス装備を開発 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn73ss5fc 2024-04-11T09:00:00+09:00
 キャリントン・テキスタイルズ社は対赤外線技術を駆使した新装備「ステルス」を発表した。
  【画像出典】X: https://twitter.com/_Gungineer_/status/1757963688865394880/photo/1


 
英国キャリントン・テキスタイルズ社が、最新の対赤外線テクノロジーを使用した「IRステルス装備」を発表した。この革新的な装備は、兵士の安全を確保するために熱源を管理する特殊機能を備えており、戦場での赤外線(IR)センサーによる兵士の探知を困難にする。
 
発表されたIRステルス装備は、米国の繊維材料メーカー「Noble Biomaterials」(以下、Noble社)との共同開発によって生まれた。装備は軽量でありながら耐久性に優れており、近赤外線、中赤外線、遠赤外線用など全てのタイプのIRセンサーに対応している。この革新技術は、Noble社が2023年9月に軍事環境における熱検知を軽減するために開発した熱源管理(CIRCUITEX)テクノロジーが使用されている。
 
キャリントン・テキスタイル社のセールス責任者であるポール・ファレル氏は「軍の演習や野営訓練において、様々な実証試験を行った。IRステルス装備を着用した兵士の熱シグネチャーは完全に遮断され、IRセンサーの観測地点に関係なく、周囲の地形とほとんど区別できなくなる」と説明している。
 
Noble社CEOのジョエル・フューリー氏は、「当社の特許技術であるCIRCUITEXは、高度なIRセンサーによる検知から兵士や装備を守るように設計されている。我々の技術が同盟国の兵士に作戦上の優位性を提供できることを誇りに思う」と述べた。
 
最新の対IR技術となるステルスは、2024年2月26日からドイツのニュルンベルクで開催された、公的セキュリティの国際展示会「Enforce Tac2024」で製品発表とデモンストレーションが行われ、各国の軍や法執行機関から大きな注目を集めている。
 
 
【参考】
https://www.carrington.co.uk/en/media/newsroom/stealth/
 
https://pciaw.org/innovative-textile-technology-enhances-thermal-signature-management-for-military-protection/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】米ジェファーソン研究所が「永遠の化学物質」を分解する技術を開発するために補助金を獲得 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn2sbfoib 2024-04-10T17:40:00+09:00
2020年9月にコロラド州ファウンテンのファウンテンクリーク地域公園
で採取されたPFAS検査のためにサンプル
【画像出典】Military.com:
https://www.military.com/daily-news/2024/04/08/virginia-lab-receives-75-million-grant-adapt-technology-break-down-forever-chemicals.html
 
バージニア州ニューポートニューズのジェファーソン研究所が、米エネルギー省から750万ドル(約11億円)の補助金を受け取り、「永遠の化学物質(forever chemicals)」を分解するために水処理プラントで使用できる粒子加速器を開発するとのこと。

ジェファーソン研究所では、廃水浄化用の小型加速器の開発に取り組んでいる。同研究所のジョン・ヴェネケイト氏は次のように述べている:

「この資金提供は、この技術に関する原理と、産業界で使用可能な実証機を作れるレベルとの間のギャップを埋めるのに役立つ」

「永遠の化学物質」とは、有機フッ素化合物(PFAS)のように自然界でほとんど分解されることがない化学物質のことをいい、米軍基地や工場周辺の河川などからの検出が続き、問題となっている。

PFASは、正式には「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」は、水や汚れ、油脂に強い製品を作るために使用される化合物の一種である。PFASが基地から検出された背景として、飛行機や船など燃料火災が起きたときの消火に欠かせない泡消火剤の使用がある。泡消火剤は1950年代の軍事訓練で使用されたが、それ以降は緊急事態に限定されているとのこと。

2023年、米環境保護局(EPA)が飲料水中の汚染物質に関する国家基準を勧告したことで、PFASが地下水を通じて近隣に流れ込むことへの社会的関心が高まった。その規則案は、PFASが安全とみなされるには、同庁の以前の指針値である1兆分の70をはるかに下回る濃度レベルであるべきだと説明している。

米環境保護庁(EPA)の規制案を受け、国防総省は9月、PFAS汚染の可能性が疑われる700以上の施設について調査を開始した。9月のブリーフィングでは、施設の約3分の1が調査され、少なくとも245の米軍基地から「永遠の化学物質」が流出しているとされている。

しかし、これらの化学物質はかつて科学者たちが考えていたほど永遠ではないかもしれないという。ベネケイト氏によれば、現在では超伝導高周波粒子加速器から発生する電子ビームによってPFASは分解され、化学物質は無害になるという。

ジェファーソン研究所のチームが取り組まなければならない最大の課題のひとつは、加速器を科学者だけでなく、産業界のスタッフが操作できるようにすることだと彼は言う。

「加速器科学の博士号(Ph.D.s in accelerator science)を持つスタッフが複数いなくてもマシンを使えるようにする必要がある」と同氏は言う。

ジェファーソン研究所のデータサイエンス部門では、このようなコンパクトな加速器を動かすための、機械学習を統合した自動制御システムのフレームワークを開発するチームを支援している。

「理想的な形としては、ユーザーがボタンを押すだけで操作ができるインターフェースとする」とベネケイト氏は言う。

この加速器の正確な価格は未定だという。

ジェファーソン研究所は、カリフォルニアに本社を置くジェネラル・アトミックス社と協力している。ジェネラル・アトミックス社は、加速器を商業用に製造することに関心を持つテクノロジー企業である中で、ジェネラル・アトミックス社の科学者ドリュー・パッカード氏は次のように述べている:

「超伝導高周波(SRF)技術は、環境修復や永遠の化学物質へのアプローチに革命をもたらし、世界をよりクリーンで安全なものにする、未開拓の大きな可能性を秘めている」


【出典】
https://www.military.com/daily-news/2024/04/08/virginia-lab-receives-75-million-grant-adapt-technology-break-down-forever-chemicals.html
https://www.jlab.org/partnerships/blastpfas]]>
クライシスインテリジェンス管理者
英陸軍、小銃用ドローン照準器を装備化 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn5hdk3ue 2024-04-10T15:00:00+09:00
英陸軍は小銃用ドローン照準器「SMASH」の導入を開始した。
【画像出典】X: https://twitter.com/16AirAssltBCT/status/1765049901648327005/photo/1


 
英陸軍は、人工知能(AI)を活用して敵のドローンを撃墜する新技術の導入を開始した。
 
英国コルチェスターの第16空中強襲旅団戦闘団は、初めてドローン用照準器「スマートシューター(以下、SMASH)」を正式に装備した部隊である。現在、戦闘団の兵士はSMASHの効果的な運用法の訓練を受けている。
 
旅団の訓練を担当しているジョー・クック准尉によれば、「ドローンとの戦いで最も効果的なのは撃墜だが、小型で早く動くドローンに弾丸を命中させるのは至難の業である。しかしSMASHを使用することで、射撃のスキルが高くない衛生兵などもドローンを撃墜できるようになる」という。
 

 <SMASHの高精度射撃> 
英国防装備・支援本部(DE&S)は2023年6月、数百セットのSMASHを460万ポンド(約8億7,500万円)で発注した。ウクライナや中東の戦場においてドローン攻撃が最大の脅威となっている状況下で、英軍は戦場で優位に立つことを目指している。
 
SMASHのAI技術は一発必中を目指している。この技術は画像ソフトと連動して目標を認識し、動きを予測する。ドローンが飛行中でもロックオン可能であり、目標と照準が完全に一致したときのみ弾丸が発射される仕組みだ。最初に英軍のSA80 A3小銃に装着される予定である。
 
国防閣外調達大臣のジェームズ・カートリッジ氏は「英国国防省は、兵士がSMASHを使ってドローンを対処できると考えている。緊急調達により現用装備(小銃)にドローン対処能力を追加したことは、陸軍が必要な装備を最適なタイミングで入手できた良い例となった」と述べている。
 
※1ポンド=190.4円



【参考】
https://defence.m5dergi.com/one-cikan/british-army-begins-fielding-ai-enabled-smash-anti-drone-tech/
 
https://www.thedefensepost.com/2024/03/08/british-army-smash-anti-drone/
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
新NATO加盟国スウェーデンの軍事力 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnrk92aux 2024-04-10T09:00:00+09:00
スウェーデン空軍はスホーイキラーと呼ばれている「グリペン」戦闘機を多数装備している。
【画像出典】Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Saab_JAS_39_Gripen#/media/File:Saab_JAS_39_Gripen_at_Kaivopuisto_Air_Show,_June_2017_(altered)_copy.jpg


スウェーデンは2024年3月7日、トルコ、そしてハンガリーとの長い外交交渉を経て、ついに北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。スウェーデンの加盟承認書は、同盟の寄託機関であるアメリカ政府に提出され、翌週(3月11日)にはベルギーのブリュッセルにあるNATO本部にスウェーデン国旗が掲げられた。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はSNS上で、「スウェーデンの加盟はNATOをより強化し、スウェーデンを安全にし、同盟全体をより安全にする」と発表した。
 
では、NATO32番目の加盟国の装備品はどのようなものだろうか。英国の軍事サイト「Airforce Technology」が次のように説明している。
 

<空軍装備>
スウェーデン最大の防衛産業である軍用航空機部門の予算額は、2023年から28年の間に45億ドル(約6,800億円)に達する見込みである。この予算のうち主力戦闘機である「サーブ 39 グリペン(以下、グリペン)」が全体の41%を占めている。グリペンはSAAB社が製造する多用途戦闘機で、世界6ヵ国が採用。スウェーデン空軍は、1997年から2007年にかけてグリペンC/Dを95機調達し、2021年には最新のグリペンEを2機導入した。
 
2023年、スウェーデン空軍は2億5,400万ドル(約380億円)相当のグリペンEを調達し、2033年までにさらに10億ドル(約1,510億円)相当を追加する予定である。この計画は、グリペンの装備拡充を示しており、NATO軍が重点を置いている統合打撃戦闘機F-35への変更はないと考えられる。
 
スウェーデン国防省は2022年7月、サーブ社との契約に基づき、2機の早期警戒機「グローバルアイ」を7億1,029万ドル(約107億円)で取得した。この航空機は、陸、海、空中において重要な情報を監視、偵察、収集し、NATO軍の各部隊にリアルタイムの情報を提供することができる。機体には「Erieye」と呼ばれる3次元レーダー(捜索範囲550㎞)が搭載されており、高性能センサーや指揮統制システムなどが統合されている。2023年は、ロシア海軍の北海での活動が顕著になっていたが、この際、グローバルアイは高い偵察、監視能力を発揮した。
 

<陸軍装備>
陸軍は20年以上前に取得した120両のレオパルド2戦車を運用。現在のレオパルド2は、装甲の追加と赤外線サイトの増設により、防御力と索敵能力を向上させた2A5型にアップグレードされている。
 
2023年11月からスウェーデン陸軍はドイツの軍事メーカーKNDSと契約し、44両のレオパルド戦車に長射程用主砲(L55)への交換、補助エンジンの追加、地雷防御力強化などを行う2A6型への改修を進めているところだ。残りの76両についても同様のバージョンアップが行われる見込みである。
 
2022年12月、スウェーデン政府はパトリオット地対空ミサイルシステムの調達を決定した。これは、長距離ミサイルの脅威が高まる中、スウェーデン全体の防空能力を近代化する計画である。システムの構成は、4基のレーダー装置と射撃管制装置、9つのアンテナ・マスト・グループ、12基のミサイル発射機、300発以上のMIM-104 パトリオットミサイルとなっており、2024年からの運用が予定されている。
 

<海軍装備>
スウェーデンはバルト海に面し、ロシアのカリーニングラードと海上境界線を接している。そのため、バルト海の防衛はスウェーデン海軍の重要な任務だ。
 
スウェーデン海軍は、潜水艦の優れた隠密性を重視している。現在、4隻のディーゼル電気潜水艦(A19型3隻とA17型1隻)を運用しており、2027年までに最新のブレーキンゲ級(A26)2隻の導入を計画中だ。ブレーキンゲ級は非大気依存推進(AIP)エンジンを搭載している。動力に酸素を必要とせず、長時間の潜航が可能である。この潜水艦は水深が浅いバルト海での活動を前提に設計されており、NATO同盟国が保有する大型潜水艦にはない大きな長所を持つ。
 
スウェーデン海軍は、コルベット艦7隻、掃海艇8隻に加え、160隻のCB90高速攻撃艇と多数の軽艦艇を保有している。特筆すべきは、スウェーデンが世界に先駆けて開発したステルス艦のビスビュー級コルベット艦だ。この艦船は小型ながら多様な任務に対応でき、短距離防空能力が高いとされる。
 
スウェーデンは軍事強国で、特に海軍と空軍が優れている。ロシアと欧州境界に位置する重要な海域であるバルト海では、高い機動力を持つ潜水艦を運用。さらに、世界的に高性能とされる国産のグリペン戦闘機を多数備えている。
 
多くの軍事専門家は、軍事強国スウェーデンがNATOに加盟することで、NATOの軍事力が向上し、軍事協力はさらに堅固になると予想している。
 
※1ドル=151円換算  
 


【参考】
https://www.airforce-technology.com/news/what-capabilities-does-sweden-have-to-offer-nato/
 
https://www.newsweek.com/what-sweden-adds-nato-military-arsenal-1873758


 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(契約)】米IntelliBridge社がFBIと対テロ諜報活動に関する契約を締結 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnhd768vu 2024-04-09T17:00:00+09:00
FBI対テロ飛行チームによる訓練の様子
【出典】FBI:https://www.fbi.gov/image-repository/fbi-counterterrorism-fly-team-training.jpg/view


 
米国のテクノロジー企業「IntelliBridge」が、米連邦捜査局(FBI)のテロ対策部門(CTD)と5 年で総額2,300万ドル(約34億円)の契約を獲得し、24 時間365日の運用対応と情報サポートを提供し、迅速なデューデリジェンスとテロの脅威に起因する差し迫った生命の脅威の評価を実施するとのこと。
 
IntelliBridgeのCEOであるCass Panciocco氏は、「FBIの国家安全保障および諜報プログラムをサポートする最大のミッションを請け負う業者として、IntelliBridgeはこの重要な仕事を継続できることを誇りに思っており、最先端の技術ソリューションに関してFBI と協力することを楽しみにしている」と述べている。
 
IntelliBridgeのインテリジェンス・アナリストは、米国の利益に対するテロ攻撃を防止する取り組みにおいて、厳格な評価、品質保証を提供し、FBIの国内および国際部門間の調整および支援にあたる他、国家安全保障に対する脅威を特定して無力化するというCTDの能力を強化するべく、インテリジェンス・レポートと分析プロダクトを開発する。
 
新たに同社の連邦法執行・情報部門の上級副社長兼ゼネラルマネージャーに任命されたJesse Levine氏は次のように述べている:
 
⚫︎私たちは、テロの脅威が国内外において前例のないレベルにあることを認識しています。この種の捜査の極めて重要な性質は、命を直接救い、国家の安全を守ることです
⚫︎IntelliBridgeは8年間にわたりテロ対策においてFBIの取り組みを支援しており、この重要な使命を支援し続けることに身の引き締まる思いです
 
※1ドル=151円換算



【出典】
https://intellibridge.us/intellibridge-awarded-23m-fbi-counterterrorism-intelligence-contract/
 
https://washingtonexec.com/2024/04/intellibridge-snags-23m-fbi-counterterrorism-intelligence-contract/


 
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クライシスインテリジェンス管理者
米国の核兵器近代化、新型ICBM計画の利害関係 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnib6ky2r 2024-04-09T15:30:00+09:00
地上配備型戦略的抑止力として知られる空軍の最新兵器システム、LGM-35Aセンチネルのイラスト
【画像出典】米空軍核兵器センター:
https://www.afnwc.af.mil/News/Article/2990244/air-forces-new-intercontinental-ballistic-missile-system-has-a-name-sentinel/


何十年もの間、米国は核兵器搭載可能な爆撃機、弾道ミサイル潜水艦、大陸間弾道ミサイル(ICBM)からなる核「三位一体」を実戦配備し、核戦争を防ぎ米国とその同盟国の安全を守ってきた。
 
これら3つのシステムはすべて近代化されている。ICBMもその例外ではない。空軍は1970年代初頭に初めて実戦配備され、ロナルド・レーガンが大統領になったときに退役して置き換わるはずだったミニットマンⅢ(MMⅢ)ICBMを、センチネルICBMに置き換えようとしている。
 
残念ながら、センチネルはまったくうまくいっていない。当初は960億ドル(約14兆4,960億円)の費用が見積もられ、MMⅢが退役するはずだった40年以上後にあたる2026年の製造を予定していた。しかし、このプログラムはコストとスケジュールの大幅な超過が決まっている。
 
空軍は2024年2月、プログラムがおよそ1,310億ドル(約19兆7,810億円)に増加し、配備が2年遅れるかもしれないと報告したのだ。なぜこのような事態になっているのだろうか。
 
2023年6月の政府説明責任局(GAO)の報告書によると、このプログラムでは、新しいミサイルとロケットモーターを製造するだけでなく、ミサイルサイロ、7,000マイル(約11,265km)に及ぶユーティリティ通路、5つの州内のミサイル発射場までの道路網の近代化が必要だという。
 
さらに空軍は、何百もの土地所有者と不動産地役権を交渉しなければならない。このプログラムの主契約者であるノースロップ・グラマン社は、サプライチェーンの問題、訓練された労働力の不足、従業員のセキュリティ・クリアランス手続きの遅れなど、他にも課題があると指摘している。
 
2024年1月には、プログラムのコストとスケジュールの超過がナン・マッカーディ法違反の引き金となり、国防長官室はプログラムを見直し、再編成するか中止するかを決定せざるを得なくなった。そのためセンチネルを廃棄し、潜水艦ベースの核抑止力だけに頼るか、あるいはMMⅢを2040年まで延長するかという話も、すでに軍縮関係者を中心に出ている。ただしMMⅢの延命は、最近のMMⅢ試験発射の失敗が証明したように、ロケット自体の老朽化やミサイルの金属疲労の潜在的な影響を考えると、もはや実行可能な選択肢ではない。
 
加えて、敵の核戦力にとって再び標的を絞る難題となるICBMを三位一体から排除することで、敵のミサイルを弾道ミサイル潜水艦基地や軍事基地、あるいは民間人の標的など、他の標的に向けることができるようになる。言い換えれば、ICBM戦力の退役は、敵の核ミサイルにとって事実上の戦力増強となるのだ。
 
さらに、現在の米国の弾道ミサイル潜水艦戦力は、ICBM分野で現在実戦配備されている弾頭の数を補充したり、置き換えたりする能力を有していない。また、現在の造船能力の限界を考えると、退役したICBM戦力を補うだけの弾道ミサイル潜水艦を建造し実戦配備するには、2040年代までかかるだろう。核抑止力を維持するためにも資金援助は必要だ。
 
しかし、もしコスト超過分を支払うことが他の防衛プログラム削減を意味するならば、議会はそれを考慮しなければならない。このようにセンチネルICBMの問題は、利害関係が発生する、大きな問題なのである。
 
※1ドル=151円で換算
 


【参考】
https://nationalinterest.org/feature/modernizing-americas-nukes-stakes-sentinel-icbm-project-209911
 
https://engineer.fabcross.jp/archeive/2300405_sentinel.html
 
https://www.afnwc.af.mil/Weapon-Systems/Sentinel-ICBM-LGM-35A/
 
https://www.heritage.org/missile-defense/commentary/modernizing-americas-nukes-the-stakes-the-sentinel-icbm-project
 
https://www.airandspaceforces.com/air-force-icbm-modernization-czar-schedule-sentinel/


 
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クライシスインテリジェンス管理者
インド軍、ミサイルやレーダーなどに大幅に予算投入 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn3kvawct 2024-04-09T09:00:00+09:00
Su-30MKI 
【画像出典】X:https://twitter.com/nomad_grj/status/1774806744390307962


 
インド国内において、安全保障に関する内閣委員会が軍の戦闘能力強化のために、総額92,000億ルピー(約16兆5,600億円)以上に相当するいくつかの防衛協定を承認した。これらの投資は、防衛能力を強化して、防衛装備品製造における自立を促進することが目的である。
 
Hindustan Aeronautics Limited (HAL) は、国防研究開発機構 (DRDO) の支援を受け、Su-30MKI戦闘機部隊の大幅なアップグレードの承認を得た。この60,000億ルピー(約10兆8,000億円)のプロジェクトによって、新しいレーダー、ミッションコントロールシステム、電子戦能力、兵器システムの統合が可能となる。
 
インド海軍は最前線の軍艦に配備するため、攻撃範囲450kmの長距離射程のブラモス超音速巡航ミサイルを220発以上取得。この契約は約19,500億ルピー(約3兆5,100億円)に相当し、ブラモス・ミサイルに関しては史上最大の契約となった。
 
インド空軍(IAF)では、既存のMiG-29戦闘機部隊用の新型先進エンジンの製造が承認され、HALがロシアと協力して約5,300億ルピー(約9,540億円)の費用をかけて生産する予定である。
 
高性能レーダーとL-70防空砲の新バージョンの取得も承認された。各プロジェクトの価値は約6,000億ルピー(約1兆800億円)。戦略的地域におけるインドのレーダー照射範囲を強化し、ドローンや航空機による潜在的な攻撃に対する防御の強化が目的だ。
 
このプロジェクトによって、ロシア製コンポーネントがインド国産システムに置き換えられることになる。防衛装備品製造におけるインドの自立に向けた取り組みが、強く反映されるであろう。また、航空機には迫り来る脅威に対抗して、敵の通信を妨害するための新しい電子戦システムが装備される予定だ。

ラジナート・シン国防大臣は、同国の年間防衛生産額が2028年から2029年までに30億ルピー(約54億円)に達すると予想している。モディ政権が2047年までにインドを先進国に発展させることを目指して、あらゆる分野での長期的発展に注力しているとシン氏は語る。防衛装備品輸出で大きな進歩を遂げたインドにとって、実現可能な目標といえよう。
 
※1ルピー=1.8円換算




【参考】
https://www.newsweek.com/india-fighter-pilot-crash-tejas-1878594
 
https://economictimes.indiatimes.com/news/defence/drones-missiles-radars-fighter-jets-indian-armed-forces-to-get-nearly-1-lakh-crore-infusion-for-game-changer-tech/articleshow/107981352.cms
 
https://www.economist.com/asia/2023/11/29/narendra-modi-is-remaking-indias-14m-strong-military

https://www.ndtv.com/india-news/women-personnel-being-appointed-as-onboard-warships-govt-in-lok-sabha-4980784

 
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クライシスインテリジェンス管理者
【企業情報(開発)】米海軍がドローンを無力化する高出力マイクロ波(HPM)技術の試験を開始 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn7r62b7p 2024-04-08T15:00:00+09:00
高出力マイクロ波(HPM)防御システムのイメージ
【画像出典】米海軍研究所:
https://www.usni.org/magazines/proceedings/2021/may/dont-miss-boat-high-power-microwave-defense


 
高成長テクノロジー企業である米Epirus社は、4月4日、米海軍が中心になって進めている先端海軍技術演習沿岸トライデント・プログラム「ANTX-Coastal Trident 2024」(ANTX-CT24)において、同社がもつロングパルスの高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)能力を調査するための実地実験が行われることを発表した。同実験では、船外機を動力源とする小型船舶を一時的に無効化するHPM技術が用いられる。
 
高出力マイクロ波(HPM)は、1発あたりのコストが比較的安く、ほぼ無制限の弾倉を保有できるため、ドローンの群れ(スウォーム)やクアッドコプターなどの小型無人航空機(UAS)を撃墜するのに特に有利であると考えられている。「ドローンと1対1で対抗するには十分な迎撃機がないので、高出力マイクロ波(HPM)能力を活用する必要がある」と国防総省の共同対小型無人航空機対策局(JCO)のディレクターであるショーン・ゲイニー少将は2023年8月の宇宙・ミサイル防衛シンポジウムにて述べている。
 
米海軍の「ANTX-CT24」は、海軍海上戦闘センター(NSWC)のポート・ヒューニーメ技術局が計画し、実施するもので、増大する海上ドローンの脅威に対処するための、低コストで効果的かつ非致死性の選択肢の能力を検証することを目的としている。海上ドローンは近年、国家および非国家主体の双方によって攻撃的な軍事能力として使用されている。
 
海軍がEpirusのHPM技術をテストするという今次決定は、米陸軍が去る2023年1月23日に同社と指向性エネルギーシステム「Leonidas」の試作機供給に関し、6,610万ドル(約99億円)の契約を締結したものに続くものである。
 
同社は、「Leonidas」を構成する4つのシステムのうち、最初の1台を2023年11月に米陸早期能力重要技術室(RCCTO)に納入し、2024年3月にすべてのシステムの納入を完了した。同システムは4月に追加の兵士訓練と技術開発テストを受ける予定とのこと。
 
Epirusのアンディ・ロウリーCEOは次のように述べている:
 
●別の脅威環境におけるロングパルスHPMテクノロジーの有効性を実証できるこの機会を歓迎する。Epirusはドメイン全体で幅広い脅威を防御できる
●国防総省との協力拡大は、従来の防衛エコシステムの外で革新的なテクノロジー企業と協力するメリットに対する認識が高まっていることも強調している
 
この演習では、船外機や小型船舶を一時的に無効にする技術の能力をテストすることに加えて、港湾のセキュリティと重要なインフラ保護の関係者を参加させて、対船舶能力への認識とアクセスを高め、無人自律船舶に導入した場合の有効性もテストする。
 
「ANTX-CT24」プログラムの広報担当者は、この研究演習は海軍の革新的な科学工学研究を支援し、港湾と海上の安全保障における米海軍とその機関間のパートナーのギャップに対処するために提案されている最先端技術の特定、評価、実装を加速することを目的としていると述べている。
 
NSWCの艦隊実験および演習の責任者であるブレンダン・アップルゲート氏は、次のように述べる:
 
●ANTX-CT24では、無人システム対策など幅広い技術分野にわたる技術実証や実験が行われる。
●NSWCはこれまで、電子システムや無人航空機群への対策方法としてHPM実験を数回実施しており、今後の評価が期待される
●EpirusのHPMシステムを対水面船舶の役割で活用することは、プログラムの目標を効果的にサポートするだろう
 
我が国でも2022年12月に公表された国家防衛戦略で、初めてドローンが「無人アセット」として位置づけられ、防衛力の抜本的強化策の一つとして大きくクローズアップされている中、令和6年度防衛関係費ではドローン・スウォーム攻撃等対処能力(統合防空ミサイル防衛能力)として、高出力マイクロ波(HPM)に関する研究費が26億円計上されている。

※1ドル=151円換算



【出典】
https://www.epirusinc.com/news-item/us-navy-set-to-test-epirus-drone-disabling-hpm-technology-against-seaborne-attack-vessels
 
https://antx.org/documents/
 
https://defensescoop.com/2023/11/01/army-receives-first-epirus-built-drone-zapper-prototype/
 
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/2024/yosan_20240328_summary.pdf
 


 
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
米陸軍、レーザー兵器を最終試験 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnofb5xvz 2024-04-08T09:00:00+09:00
 レーザー兵器を搭載した4両のストライカー車両は中東に配備され最終試験を受けている。
【画像出典】米陸軍HP
https://www.army.mil/article/260538/directed_energy_weapon_system_points_toward_the_future_of_warfare
 

 
米陸軍参謀副総長ジェームズ・ミンガス大将は、50キロワットのレーザー兵器を搭載したストライカー車両(以下、DE M-SHORAD)を「実戦検証」のため中東に4両配備したことを発表した。
 
軍事専門サイト「ブレーキング・ディフェンス」によれば、4両のDE M-SHORADは2024年2月上旬に米中央軍(CENTCOM)の作戦地域に到着し、将来の運用に向けた最終試験を行っている。これらの車両は既に、ホワイトサンズ・ミサイル実験場(ニューメキシコ州)で各種の性能試験をクリアしているが、さらにレーザー兵器の効果が低下すると考えられる砂嵐などの過酷な気象条件下でも十分な性能を持つことを実証する必要がある。
 
米海軍が開発した艦船用の60キロワットのレーザー兵器(HELIOS)については、理想的な焦点調整でレーザーを照射すれば、大気中の水蒸気の影響を大幅に軽減できることが分っている。しかし、地上の砂嵐に対する有効な対策はまだ見つかっていない。ミンガス大将によれば「レーザーの効果は天候に左右される。最良の解決策を探すために、中東の作戦地域は理想的な試験場である」という。
 
米陸軍が作戦地域でレーザー兵器を試験するのは今回が初めてではない。2023年8月、米陸軍小型無人機(ドローン)対策室長であるショーン・ゲイニー少将は、「評価試験のため、複数の10キロワット・レーザー試作機を中央軍、アフリカ軍、インド太平洋軍の各軍に送った」と明らかにした。
 
現在、敵対するドローンの性能が日増しに高度化している中、陸軍の防空兵器の切り札として高出力レーザーの装備化は急務である。国防総省は2014年のロシアによるクリミア併合以来、レーザー兵器を低高度防空戦略の重要装備として開発を進めてきたが、現在はロシアや中国もこの分野に参入し、熾烈な開発競争が展開されている。
 
レーザー兵器は、無制限の弾倉と通常の防空兵器(対空砲、MANPAD)よりも遥かに優れた精度を持つため、ミサイル、砲弾、ドローン、さらには回転翼機を迎撃できるゲームチェンジャーとなる可能性がある。2023年の米国会計検査院の報告によれば、国防総省はレーザーを含む指向性エネルギー兵器の開発に毎年10億ドル(1,510億円)を投じている。
 
実戦で使用可能なレーザー兵器の完成は、イラクとシリアにおける米軍基地へのドローン攻撃や紅海でのフーシ派による商船や艦船へのミサイル攻撃に対処するため、新たな緊急性を持っているのだ。
 
米陸軍が防空兵器として予定しているレーザー兵器はDE M-SHOARDだけではない。 2023年10月、同軍はロッキード・マーティン社と300キロワット級の「Valkyrie」レーザーシステムの開発契約を締結した。このレーザーシステムは、重高機動戦術トラック(HEMTT)に搭載され、大型ミサイルや軍用ドローンを迎撃するように設計されており、巡航ミサイルに対しても有効であるという。
 
時間と多くの資金を投じて開発されたDE M-SHOARDと、新編されたレーザー防空部隊(仮称)は、これから中東の作戦地域において実戦を含む各種の運用試験が予定されている。ミンガス大将は、「プロトタイプは100%の機能は発揮できないだろう。私はそれでいいと思っている。我々はそこから学ぶことができる」と述べている。
 
※1ドル=151円換算



【参考】
https://www.military.com/daily-news/2024/03/04/moment-of-truth-armys-chief-laser-weapon.html
 
https://theconversation.com/high-energy-laser-weapons-a-defense-expert-explains-how-they-work-and-what-they-are-used-for-225071
 
https://spie.org/news/photonics-focus/marapr-2024/zapping-enemy-targets#_=_

 
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クライシスインテリジェンス管理者
陸上自衛隊が無人システムの試験を拡大へ https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnkcm5guw 2024-04-05T19:00:00+09:00
陸上自衛隊で検証中・導入検討中の無人アセット
【出典】陸上自衛隊公式X:
https://x.com/JGSDF_pr/status/1772549093631361288?s=20
 
陸上自衛隊は3月26日、試験・評価用の無人航空機(UAV)および地上車両(UGV)を追加取得すると、ソーシャルメディア・アカウント(X)で発表した。同発表につづけて、X上で陸自は以下のように付け加えている:

●防衛力の抜本的強化のため、人的損耗を局限しつつ、空中・地上において非対称的な優勢を獲得するための無人アセット防衛能力を強化していく
●偵察や輸送等の任務において長期連続運用可能な無人航空機(UAV)、陸上無人機(UGV)を用いた実証を行い、その本格導入に向けた検討を加速していく

陸上自衛隊によると、三菱重工業(MHI)とともに長期運用可能なドローン「E-5L型UAV」(フジ・インバック社製)を検証中である他、「THeMIS」(エストニアのミルレム製)、「Mission Master SP」(ラインメタルカナダ製)、「Vision60」(米ゴーストロボティクス製)のUGVを丸紅エアロ、エス・ティ・ジャパン等から購入後検証予定とのこと。
 
陸上自衛隊補給統制本部(GMCC)は1月初め、2種類の輸送用UAVのコンセプト・デモンストレーション(概念実証)に関する競争入札を発表している。他にも、補給統制本部は、偵察UAVの能力向上、マルチロール固定翼UAVの概念実証、災害対応UAVの通信に関する技術評価など、多様なプロジェクトの入札を積極的に募集している。
 
陸上自衛隊補給統制本部(GMCC)は1月初め、2種類の輸送用UAVのコンセプト・デモンストレーションに関する競争入札を発表している。
 
また、偵察UAVの能力向上、マルチロール固定翼UAVの概念実証、災害対応UAVの通信に関する技術評価など、多様なプロジェクトの入札を積極的に募集している。
 
陸上自衛隊が最近調達した非搭乗型システムの一部は、すでに実際のオペレーションにおいてテスト運用されている。例えば、1月に発生した能登半島地震の被災者の避難経路を調査するため、米ゴーストロボティクス社のUGV「Vision60」が数台使用された。また、UGVは被災地から離れた二次避難所へ避難住民が移動する際の支援にも使用された。
 
by Jr Ng
 

この記事は「アジアン・ミリタリー・レビュー(Asian Military Review)」誌の記事を翻訳し、転載しているものです。同誌はバンコクに拠点を置く、アジア太平洋地域で最大の発行部数を誇る防衛専門誌です。2024年4月より、NSBT Japanは「アジアン・ミリタリー・レビュー」との記事交換を行っています。

元記事はこちら
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fng89cxmm 2024-04-05T18:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnwh7mt8h 2024-04-05T16:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 米国におけるセキュリティークリアランス資格保持者の報酬 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn9cktuz6 2024-04-05T15:00:00+09:00 NSBT Japan アナリスト 小泉 吉功

はじめに
昨今、「セキュリティークリアランス」制度の創設に向けた法案に関する議論をよく聞く。論点はその必要性と共に、プライバシーの侵害といった様々な負の側面を指摘している人もいる。そうした中で非常に不思議なのは、「セキュリティークリアランス資格保持者」が、厳格な審査や義務を負う一方で、どれだけ良い処遇を受けることになるかという議論を聞かないことである。
 
皆さんは、米国のセキュリティークリアランス資格保持者が、どのような報酬を得ているのかを気にしたことがあるだろうか。また、クリアランス・ジョブ紙[i]という、資格保持者向けのコミュニティ業界紙があることをご存知であろうか。同紙には1,660,104名のセキュリティークリアランス資格志願者が登録している。志願者が資格を獲得するために有益な様々な情報を提供している。2024年3月13日に、同紙は、国家安全保障に関するセキュリティークリアランス資格保持者の報酬が、高くなっていることを報道した[ii]。2023年に、セキュリティークリアランス資格の獲得者は報酬が6%増額され、合格者の平均給与は新たな最高額の114,946ドルに増加したという。日本円換算で約1,700万円強である。また、2年連続で、個人の67%が基本給の増加を報告したという。
 
困難な資格取得には、そしてそれを維持するためにも、厳しい義務が伴うような資格には、当然、それに見合う処遇があってしかるべきであるが、我が国は、この点、非常に慎重な態度をとっている論評が多いようである。米国において、セキュリティークリアランス資格保持者の報酬が増加している事実は、資格者に対する需要が益々増加しているという背景を示している。高い報酬により、セキュリティークリアランス資格の申請者が増加することも期待されている。国家にとってのメリットのみならず、個人に対するメリットも重要であるが、そのあたりの見解についての主張は慎重な様子である。日米で環境が大きく異なる点は、理解しておく必要があるが、米国の実態を認識しておくことも重要であろう。
 
そこで、今回は、クリアランス・ジョブ紙が発行した、「2024年セキュリティークリアランス報酬報告書(The 2024 Security Clearance Compensation Report)」(以下、同報告書)[iii]の要点を紹介してみたい。尚、同報告書は、調査報告書であり、セキュリティークリアランス資格保持者に対するアンケートの結果としてまとめたものであり、米政府の発行物では無いことをお断りしておく。国防総省の場合には、有資格者の59%がアンケートに回答している事実から考えると、同省に関しては、この結果はかなり信頼性が高いものと判断される。
 
図-1は、基本給の変化とその理由を示している。同紙によれば、従業員の経済的安定に影響を与える容赦ないインフレという課題に直面して、企業は今年大幅な給与引き上げを実施するという大胆な行動をとっている。資格を獲得した志願者は、2023年に報酬が6%増加し、114,946ドルという新たな最高額に達したという注目すべき点を目の当たりにした。注目すべきことに、2年連続で個人の67%が基本給の増加を報告した。

図-1 基本給の変化とその理由
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
クリアランス・ジョブ紙による状況分析概論
セキュリティークリアランス取得者の報酬が上昇している。世界的な新型コロナ大流行と米国経済の変化という余波を受けて、同報告書の結果は、労働力が回復しているだけでなく、現状を打破していることを示している。給与の急増は、リモートワークから従業員人口統計まで、様々な問題において画期的な年となったことを反映している。
 
セキュリティークリアランスを有する技術専門家は引き続き最高額の給与を獲得しているが、2024年は上げ潮が全ての保全資格報酬を持ち上げた年でもあり、かなりの数のセキュリティークリアランス資格保持者が6桁の給与を得ていた。公務員や国家安全保障請負業者として人生を生き抜く上での困難な嵐は、必ずしも終了した訳ではない。しかし、給与、福利厚生、ボーナスの増加は、人材を採用するだけでなく、人材を維持するために適切な報酬パッケージを使用するという重要な使命に注意を払い始めている雇用主も増加を示している。他業界で人員削減が行われる中、国家安全保障分野は抗堪性を維持しており、有能な人材に有利な機会を提供している。優秀な人材に対する需要が引続き供給を上回っている一方で、回答者数の増加と高齢化する労働力の移行に伴い、Z世代の政府の仕事への魅力が高まっていることが本調査で浮き彫りになっている。国家安全保障に従事する人材は報酬のマンネリから脱却しつつあり、欠員を埋めるために新たな才能を画期的に採用する準備ができている。国家安全保障には、現在の脅威に対処するために、セキュリティークリアランス・ホルダーのコミュニティが必要である。
 

セキュリティークリアランスの各レベルによる報酬
図-2はセキュリティークリアランスの各レベルによる報酬を示している。国防総省の場合、秘(Confidential)、極秘(Secret)、機密(Top Secret)と各レベルによる大きな差が存在する。国防総省の場合には更に機微隔離情報(SCI:Sensitive Compartmented Information)の資格があり、殆どの場合は機密資格保持者に付与されTS/SCIと示される。この場合には平均報酬は127,050ドル(約1,900万円強)となる。クリアランス・ジョブ紙は、この調査結果において、「雇用主は経験を求めて雇用する一方で、機密/機微隔離情報のセキュリティークリアランスを得た従業員を雇用したり、より詳細な身元調査に踏み切らせたりするには、多くの場合、もう少し多くの報酬を支払うことを意味する。」と指摘している。極秘(S)資格から機密/機微隔離情報セキュリティークリアランス(TS/SCI)に切り替えると、平均報酬総額が30,000ドル(約450万円)跳ね上がる。そして、機密/機微隔離情報セキュリティークリアランスの資格から情報機関のセキュリティークリアランス資格に変更するだけで、平均報酬総額は更に26,000ドル(約400万円)以上増加するのである。但し、セキュリティークリアランスが取得可能であり、適切な専門知識を備えた志願者を見つけるには多大な労力を要することも指摘している。
 

図-2 セキュリティークリアランスの各レベルによる報酬
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
セキュリティークリアランスのキャリアレベル別の報酬
図-3は、セキュリティークリアランスのキャリアレベル別の報酬状況を示している。経験2年未満である初級レベルの従事者の平均報酬額は、67,609ドル(約1,000万円)である。一方、2年以上の経験を有する資格者は82,643ドル(約1,250万円)であり、約250万円の差が存在する。10年以上の経験を有する資格者は、124,760ドル(約1,900万円)と初級レベルの従事者の約倍額となる。
 
クリアランス・ジョブ紙は、国家安全保障分野においては、特に中堅レベルキャリアに関して、人材の維持は容易では無いことを指摘している。セキュリティークリアランスのキャリアにおける管理職以前の段階では、保全資格要取得の仕事に就いたり、離職したりを短期的に繰り返すことを考えるのは簡単であるという。2023年には、中堅レベルの回答者が、報酬が8%増加し、ほぼ10万ドル(約1,500万円)の水準に達すると報告した。しかし、キャリアを更に5年追加すると、上級レベルのキャリアの回答者は、平均報酬総額が約25,000ドル(約400万円弱)増加すると報告している。この分析は、セキュリティークリアランス保持者の初期の数年間は報酬が上がるまでに時間がかかるかもしれないが、雇用主は若手レベルの従業員の給与を増やすか、そのポジションを補充するために採用する準備を整えておく必要があることを指摘している。給与的に魅力がある資格である必要があるということである。

 

図-3 セキュリティークリアランスのキャリアレベル別の報酬
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
職業(職種)による報酬
図-4は、職業(職種)による報酬を示している。一部の職業が他の職業よりも多くの報酬を得るのは当然のことである。教育、認定資格、需要の高いスキルセットにより、エンジニアリングとITは他の全ての職種よりも平均総額報酬が高くなる。クリアランス・ジョブ紙が指摘するのは、この職種において、セキュリティークリアランスの資格を有する従業員を雇用するには、高い報酬が必要となることを指摘していると思われる。
 

図-4 職業(職種)による報酬
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
国家安全保障における役割別の報酬
図-5は、国家安全保障における役割別の報酬を示している。一つの大きな問題は、国家安全保障に関わる政府職員の報酬が民間に比べて低く、人材の流出につながることである。実際により高い報酬を求めて、政府から民間に移る人材は少なく無い。優秀な政府職員を雇用する上で大きな障害である。政府は改善に努めていると見られ、同報告書によれば、政府従業員と請負業者との賃金格差は依然として残っているものの、8,000ドル未満まで縮小したという。2023年初めに発効した強制昇給のおかげで、公務員は8%の昇給の恩恵を受けた。対照的に、政府請負業者の報酬は6%増加した。セキュリティークリアランス取得者のコミュニティから離れることを選択した回答者は、2023年に報酬が1%減少すると報告した。インフレ危機と一時解雇の傾向の中で、国家安全保障に従事する人々は、安定した雇用によって変動を乗り越えることができた。
 

図-5 国家安全保障における役割別の報酬
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
各政府機関の報酬
図-6は、各政府機関のセキュリティークリアランスの資格保持者の報酬を示している。図を見れば明白であるが、国防総省以外の回答率は高く無いことに注意がいるが、それでも各政府機関により、セキュリティークリアランスの資格保持者の報酬に少なく無い差があることは読み取れる。国防総省の場合、平均報酬額が、115,538ドル(約1,750万円)であるが、中央情報局(CIA)は154,730ドル(約2,300万円強)を示している。回答率には差があるものの、報酬にも大きな差があることが分かる。
 
クリアランス・ジョブ紙の分析によれば、報酬の増加はあらゆる場所で発生したが、2023年の回答者は国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)でより大きな増加を報告しており、両機関とも2桁の報酬の変化を示している。このことから、実際に報酬が他機関よりも高くなっていることも理解できる。
 
国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)の両機関は、現在の職員のサポートを強化しながら、採用プロセスを合理化する取り組みを進めてきた経緯がある。2023年、CIAは採用プロセスを合理化し、候補者がCIAとつながりやすくするために、新しい採用ポータルを開設した。その少し前に、CIAは初の最高健康責任者(CWO:Chief Wellbeing Officer)を雇用している。ウィリアム・J・バーンズCIA長官は、「長官に就任した初日から、米国市民の世話をすることが私の最優先事項だった」と米国市民に語った。しかし、最大の雇用主である国防総省は、保全資格取得の回答者の半数以上を誇るだけでなく、2023年には報酬が7%増加し、平均報酬総額が115,528ドル(約1,700万円)になることが明らかになった。2023年に連邦政府の平均総報酬は増加し、政府機関に関係なく、平均総報酬は6桁のステータスを達成した。

図-6 各政府機関のセキュリティークリアランスの資格保持者の報酬
【出典】クリアランス・ジョブ紙

 
 
[i] https://www.clearancejobs.com/
[ii] https://news.clearancejobs.com/2024/03/13/national-security-compensation-sets-record-high-according-to-new-report/
[iii] https://about.clearancejobs.com/employers/recruiting-resources/2024-security-clearance-compensation-report

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クライシスインテリジェンス管理者
ウクライナ侵略で露軍ミサイルの性能が明らかに https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnenykdcr 2024-04-05T09:00:00+09:00
ウクライナの防空システムに導入されているパトリオットミサイル 
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2020/Jul/28/2002466201/1088/820/0/111229-A-ZZ999-003X.JPG


 
ロシア軍はウクライナ侵略開始以降、極超音速ミサイルを実戦投入しており、ロシアの運用するミサイルにはウクライナや他の西側諸国も注目している。戦場から収集された生の情報はミサイルの性能をより詳細に明確化し、それはロシア側の公式の発表と比べ大きく劣っている可能性が指摘されているのだ。他方で、ロシア軍は実戦での効果をもとに改善点を見出し、改良を進めることも同時に可能となっている。
 
ロシア軍はキンジャール(Kinzhal)、ジルコン(Zircon)といった極超音速ミサイルを保有。この2つのミサイルはいずれも、2018年に公表されたロシア軍の最新兵器だ。プーチン大統領など政府関係者は「無敵」の兵器と評価し、これらを迎撃できる防空システムは存在しないと主張する。ウクライナ侵略開始時点では、ロシア以外の国はこれらの兵器の性能や迎撃方法に関して十分な情報を持っておらず、ウクライナの戦場での使用によりはじめて、それらへのアクセスが可能となった。
 
ウクライナやNATO諸国はこれらの極超音速兵器に関する情報の蓄積、分析を進めている。ウクライナ軍はロシア軍の極超音速ミサイルを迎撃する能力を開発し、複数回迎撃に成功していると述べた。さらに2024年2月には、ウクライナ国営シンクタンクがジルコンの破片を回収したとも発表している。
 
また英国防省は2023年10月に、それ以前にキンジャールが使用されたケースを分析し、精度、破壊力が予想を下回っていることを明らかにした。ロシア側がキンジャールを最高速度マッハ10の極超音速ミサイルと発表しているのに対し、英国防省はその主張に疑問を呈している。英国防省によれば、極超音速とはマッハ5を超え、かつ相当の機動性を有するものを指すが、同ミサイルはその性能に達していないという。
 
元NATO当局者で国際戦略研究所(International Institute for Strategic Studies, IISS)のウィリアム・アルバーク(William Alberque)氏は、「ロシアが我々にそれら(ミサイル)について情報を得る機会を提供している。我々は運用、成功、失敗から多くを学んでいる」と述べた。また欧州政策分析センター(Center for European Policy Analysis, CEPA)のフェデリコ・ボルサリ(Federico Borsari)氏は、「キンジャールの速度が落ち、射程が短くなり、高度な防空システムに対しては脆弱であることが明らかになった」と言及している。
 
しかし同時に、ロシアによる極超音速ミサイルの発射は、ロシアがミサイルの開発計画を前に進める材料にもなりうる。ロシア側は実戦利用を通してミサイルの課題、改善点を明らかにするとともに、ウクライナの防空システムに関する情報を収集することもできるのだ。実戦利用で収集されたデータをもとに、今後ミサイルの速度や精度を向上させることや、ウクライナの防空システムの弱点を突く設計を行う可能性もある。



【参考】
https://www.newsweek.com/russia-hypersonic-weapons-kinzhal-missile-zircon-tsirkon-ukraine-1876760
 
https://euromaidanpress.com/2023/12/19/uk-intel-russias-first-use-of-kinzhal-missile-in-months-results-in-missed-targets-and-interceptions-in-ukraine/
 
https://www.businessinsider.com/russia-showing-undefeatable-missile-doesnt-work-that-well-uk-intel-2023-12
 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231220/k10014294281000.html

 
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クライシスインテリジェンス管理者
米空軍、超音速ミサイル開発を前進 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fncwr52ng 2024-04-04T09:00:00+09:00
2020年の超音速兵器ARRW実験の様子 
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2020/Aug/08/2002473481/1200/1200/0/200808-F-GX031-1061.JPG


 
米空軍は、極超音速攻撃型巡航ミサイル(Hypersonic Attack Cruise Missile, HACM)の開発計画を2025会計年度中に試験飛行まで進めることを検討している。空軍で調達を担当するデール・ホワイト(Dale White)中将が「我々はHACMの設計を能力向上の段階へと進め、その他の開発も含め2025会計年度に試験飛行を可能にする予定だ」と明らかにした。
 
この計画は、2022年に米空軍がレイセオン(Raytheon Corporation)社とノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)社との間で開発契約を締結し開始された。HACMは空気吸入・スクラムジェット式と呼ばれる設計の巡航ミサイルである。空気吸入式とは大気中の空気をエンジンの燃料とする方法だ。燃料用の空気を機体に搭載するやり方に比べて、ミサイル本体の設計の簡素化と本体内部の空間の有効利用が可能となる。またスクラムジェット式とは、エンジン内部をくびれた構造にすることで空気を圧縮する方法である。このミサイルはマッハ5を超えるスピードで飛行し、撃墜することが非常に難しいとされている。
 
2025会計年度の予算書によると、第一四半期から第二四半期にかけて試験が行われる予定だ。2022年に空軍が最初の契約を行った際には、最初の試験にはオーストラリアの試験インフラを利用すると発表された。予算書では、25年度のプロジェクトに5億1,700万ドル(780億6,700万円)、29年度までの研究開発費に合計24億ドル(3,624億円)を見込んでいる。ただしスケジュール等の詳細は明らかにされていない。
 
米空軍は現在、HACMと並行して空中発射型即応兵器(Air-Launched Rapid Response Weapon, ARRW)とよばれる極超音速兵器を開発している。しかし空軍のフランク・ケンドール(Frank Kendall)長官によると、「現状ではより小型で、かつ多くの弾頭を発射できるHACMに重点を置いている」とのことだ。
 
米海軍と米陸軍は共同で他の極超音速兵器の開発に取り組んでいるが、順調には進んでいない。また海軍は独自に極超音速空中発射型対地攻撃ミサイル(Hypersonic Air-Launched Offensive Anti-Surface Missile, HALO Missile)という対艦兵器を開発している。
 
極超音速兵器の開発には中国やロシアといった国々も取り組んでおり、米国は後れを取っているという指摘も多い。国家航空宇宙情報センター(National Air and Space Intelligence Center)のジェフェリー・マコーミック(Jeffrey MacCormick)上級諜報アナリストは、ロシアはウクライナ侵略に利用するため、極超音速兵器の配備を進めていること、またインフラと在庫量では中国が急速に配備を進めるロシアを上回っていることを指摘した。さらには、ロシア、中国の両国ともに、極超音速兵器技術の面で米国をリードしている可能性が高いとみられている。特に中国に関してマコーミック氏は「世界トップの国々に匹敵するミサイル計画を立てている」と述べる。
 
米国は現在、極超音速ミサイルの開発に加えて、極超音速ミサイルの脅威に対処するための新たな衛星ネットワークとより高度な迎撃システムを構築している。
 
※1ドル=151円で換算



【参考】
https://breakingdefense.com/2024/03/air-force-moves-out-on-hypersonic-cruise-missile-flight-testing-in-fy25/
 
https://www.defensenews.com/air/2024/03/12/air-force-budget-backs-raytheon-hypersonic-no-lockheed-missile-funds/
 
https://www.jaxa.jp/press/nal/20020523_jetengine_j.html
 
https://physicsworld.com/a/air-breathing-rocket-engines-the-future-of-space-flight/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
2024年3月のDIMEレポート https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fn3sinnnn 2024-04-03T15:30:00+09:00 2024年3月のDIMEレポート

2024年4月1日
磯部晃一
【3月の総括】
新年度、2024(令和6)年度がスタートしました。引き続きDIMEレポートをご高覧くだされば幸いです。それでは、3月を概観します。
 
3月初旬には、中国において、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が開催された。読者の中には、全人代そのものの開催について記憶から遠ざかってしまっている方もいるかもしれない。全人代で注目されたニュースは、1988年から行われてきた首相の記者会見が行われなくなったというものであった。中国の習近平指導体制の下で明らかになってきたことは、党中央の常務委員会(習氏含む7人)、就中、習近平氏がすべての決定権を持つ体制が一層強まっていることである。習氏一人に権力が集中していくので、習氏の発言が党と国家の進む方向を決めていくことになる。権力が極端に集中する中で、正確な情報や中国にとって都合の悪い情報が彼のもとに届けられにくくなると、国家の運営や対外政策において柔軟性を欠き、硬直化する結果になっていくであろう。
 
米国では、5日の大統領選挙の序盤戦最大のヤマ場「スーパーチューズデー」において、共和党のトランプ前大統領と民主党のバイデン現大統領が両党の大統領候補にほぼ確定した。今年11月の本選挙では、4年前と同様に、再び両者が相まみえることとなりそうだ。今年11月20日で82歳になるバイデン氏と78歳のトランプ氏という高齢者候補同士の対決となる。トランプ氏が副大統領候補を誰に指名するかも注目されるところである。
 
ロシアでは、15日から大統領選挙が行われ、プーチン大統領が圧倒的な得票率で再選された。選挙のみそぎを終えたプーチン氏にとっては民意をあまり気にせずに自らの政策を実行できるフリーハンドを得たことになる。22日にモスクワ近郊で起きたテロ事件も、これを奇貨として、反体制派への弾圧を強め、ウクライナとの戦争を継続する理由づけに活用するであろう。
 
中東に目を転ずると、イスラエルによるガザ地区進攻は継続しており、停戦の機運は未だ見えてこない。先月、イスラエル軍がレバノン東部バールベックにある親イラン組織ヒズボラの拠点を空爆した。ヒズボラとイスラエル軍の全面衝突に発展することがやや懸念される。
 
日本にとっての隣国、北朝鮮は韓国や日本に対する牽制を一層強めている。さらに、ロシアとの連携も一層深まっている。18日には「超大型ロケット砲」一斉射撃訓練を実施した。これは韓国の首都ソウルを標的にした威嚇であることは容易に想像できる。このロケット砲発射について、FNNプライムオンライン「政府発表と北朝鮮の公開映像 ミサイルの数なぜ違う?【日曜安全保障】」(3月24日)では、北朝鮮の戦術の進化とわが国のミサイル発射探知能力について興味深い分析をしているので、ここに紹介しておく。
 
さて、日本では、日銀が19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決め、17年ぶりの利上げに踏み切った。日経平均株価は四半期ベースでみると、今年に入って1-3月の上昇幅は7,081円15銭となり、2023年4-6月の株高局面で記録した5,451円21銭を上回って過去最大となった。日本経済は好調のように見えるが、他方で国際社会は多くの不安定要因や思わぬ落とし穴を抱えて推移していることを忘れるべきではない。
 
3月総括の冒頭においては、DIMEという切り口ではなく、むしろ中国、米国およびロシアのP(Politics:政治)の話をもってきた。DIMEに加えて、Pも入れるべきではないかと思われる読者もおられるであろう。しかし、筆者は『米国防大学に学ぶ国家安全保障戦略入門』にもあるとおり、政治目的を達成する手段・道具がDIMEでありさらにT(技術)ということになると考えている。
 
ここで最後にT、技術の話を紹介したい。
 
安全保障の分野では、日英伊三国で共同開発する次期戦闘機(GCAP)について、与党調整を経て、第三国への輸出解禁を閣議決定した。これにより、三国間の分担比率などを話し合うフェーズに入ることができるようになった。
 
また、宇宙分野では政府の宇宙政策委員会において、「宇宙技術戦略」を策定した。同戦略は、「宇宙基本計画」(2023年6月13日閣議決定)に基づき、世界の技術開発トレンドやユーザーニーズの継続的で的確な調査分析を踏まえ、安全保障・民生分野において横断的に、我が国の勝ち筋を見据えながら、我が国が開発を進めるべき技術を見極め、その開発のタイムラインを示したものである。
 
 関係省庁における技術開発予算や10年間で総額1兆円規模の支援を行うことを目指す「宇宙戦略基金」を含め、関係省庁・機関が今後の予算要求、執行において参照していくとともに、毎年度最新の状況を踏まえたローリングを行っていくとしている。必要な宇宙活動を自前で行うことができる能力を保持するため、技術的優位性や自律性などを評価軸として、次の4つの重要技術の技術開発を推進するとのこと。このあたりに、ビジネスチャンスがあると考えることができる。詳しくは、後述の内閣府ウェブサイトを参照願いたい。
 
① 衛星
通信、衛星測位システム、リモートセンシング、軌道上サービス、衛星基盤技術
② 宇宙科学・探査
宇宙物理、太陽系科学・探査、月面探査・開発等、地球低軌道・国際宇宙探査共通
③ 宇宙輸送
システム技術、構造系技術、推進系技術、その他の基盤技術、輸送サービス技術、
射場・宇宙港技術
④ 分野共通技術
機能性能の高度化と柔軟性を支えるハードウェア技術(デジタルデバイス等)
小型軽量化とミッション高度化を支える機械系基盤技術(3Dプリンティング等) ミッションの高度化と柔軟性を支えるソフトウェア基盤技術(AI、機械学習等)
開発サイクルの高速化や量産化に資する開発・製造プロセス・SCの変革
複数宇宙機の高精度協調運用技術


【2024年3月の主要事象】
4日 日経平均株価、史上初めて4万円の大台に。今年の上昇率は20%。
5日 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が開幕
5日 中国の2024年の国防費(中央政府分)は前年比7.2%増の1兆6,655億元(約34兆8,000億円)。3年連続で伸び率が7%超え。
5日 トランプ氏、15州の予備選が集中する序盤戦最大のヤマ場「スーパーチューズデー」で東部バーモント州を除く14州を制する。予備選の戦績を23勝2敗とし、ヘイリー氏を撤退に追い込む。
5日 欧州委員会、初の防衛産業戦略を公表。ウクライナ支援や域内の防衛で不足する兵器や弾薬の増産に向け、EUレベルで資金支援。
7日 バイデン米大統領、連邦議会の上下両院合同会議で内政・外交方針を示す一般教書演説
11月の米大統領選で対決が確実な共和党のトランプ前大統領を「危険だ。受け入れられない」などと批判。経済政策では大企業や富裕層への課税強化を訴えた。「億万長者に25%の最低税率を提案する」と述べる。
7日 スウェーデン、NATO正式加盟。加盟手続きを完了。
7日 袁華智・海軍政治委員、中国の4隻目となる空母建造を明言。
12日 台湾の蕭美琴・次期副総統が訪米していることをWSJ紙が報じる。
13日 宇宙スタートアップのスペースワンが打ち上げた小型ロケット「カイロス」初号機が打ち上げ直後に爆発。
14日 中国の科学技術費、前年比で10%増の3,708億元(約7兆7千億円)に。
14日 米軍のオスプレイが段階的に飛行を再開。23年11月の屋久島沖の墜落事故を受けてオスプレイ全機種の飛行を停止していた。
15日 自民・公明両党、日英伊共同開発の次期戦闘機(GCAP)について輸出先を絞るなどの歯止めを設けて第三国への輸出を容認することで合意
15-17日 ロシア大統領選、プーチン大統領が87%余りの得票率で圧勝。プーチン氏の得票率、投票率とも過去最高と国営メディアが伝える。
18日 北朝鮮、「超大型ロケット砲」一斉射撃訓練を実施と発表。600ミリ口径の単距離弾道ミサイルとみられソウルを狙う軍事力を誇示した模様。
18日 エヌビディアのファンCEOがAI向けの新たな半導体を発表。
19日 日銀、金融政策決定会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を決定
19日 防衛省、太平洋島しょ国を中心に15カ国ほどの国防相らを招いた会合を都内で開催。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持に向け海上監視などの安全保障協力を協議。
19日 香港立法会、香港での破壊行為や外国勢力による干渉などを取り締まる「国家安全条例案」を可決。(関連、23日 同条例施行)
20日 韓国政府、「第3回民主主義サミット」をオンライン形式で開催。尹錫悦大統領は選挙への影響を狙った「偽情報」への対策の必要性を提起。※1
20日 インドネシア大統領選でプラボウォ国防相の当選が確定。ジョコ大統領の路線を引き継ぎ、経済成長を重視した政策運営を掲げる。
21日 陸自、木更津駐屯地(千葉県)で輸送機オスプレイの飛行を再開。
21日 英豪国防相、両国間の安全保障協力を広げる協定に署名。※2
21日 ベトナム共産党、臨時国会を開き序列2位のボー・バン・トゥオン国家主席(53)の解任を決議。※3
22日 モスクワ郊外のコンサートホールで銃乱射事件が発生。133人が死亡。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明。
23日 岸田首相、防衛大学校の卒業式で訓示。「なんじ平和を欲さば戦いに備えよ」など古代ローマや孫子の言葉を引用して「重要な目標は武力侵攻といった脅威が日本に及ぶことのないよう有事の発生を抑止することだ」と強調。
23日 香港、スパイ行為などを取り締まる国家安全条例が施行。同条例はスパイ行為や国家の秘密の窃取、国家への反逆、反乱の扇動、国家安全への外国勢力の干渉を取り締まる。秘密の範囲は香港や中国の科学技術などと幅広く「スパイ行為」も含め摘発要件の拡大解釈が可能。香港での自由なビジネスが制約され人材流出の懸念。
25-27日 ロシア対外情報局(SVR)のナルイシキン長官、平壌訪問。ロシアのウクライナ侵攻以降、北朝鮮はロシアと軍事面の連携を強化、情報面での連携も今次訪問で明らかに。
26日 政府、次期戦闘機(GCAP)について第三国への輸出解禁を閣議決定
27日 経産省、航空機産業に関連する有識者会議を開き、2035年以降をめどに次世代の国産旅客機の開発を目指す新たな産業戦略を策定。※4
28日 政府宇宙政策委員会、宇宙開発で優先的に取り組むべき技術課題を示す「宇宙技術戦略」を策定。※5


※1 民主主義サミットは、2021年にバイデン大統領が呼びかけて始まった。
※2 英豪両国間の協定には、地位協定、安全保障の協議や幕僚懇談、訓練などに関する強化、自律型の機雷除去装置などの科学技術分野での協力も含まれている。豪州は最大の貿易相手の中国との関係正常化を急ぐ一方、同志国と安保協力を深めて中国の太平洋地域への進出を抑止する態勢をとろうとしている。詳細は次のサイトを参照。
https://www.minister.defence.gov.au/media-releases/2024-03-21/australia-and-united-kingdom-commit-modernising-our-defence-relationship
※3 ベトナム共産党では、22年末からの1年余りで、トゥオン氏を含めて4人の政治局員が失脚。最高指導者のチョン氏の書記長職はすでに異例の3期目。急転直下の辞任劇の背景には、26年に開く5年に1度の共産党大会を見据えた権力争いがあるか?
※4 27日に提示された「我が国航空機産業の今後の方向性について」(2024年3月27日経済産業省製造産業局)については次を参照。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/kokuki_uchu/pdf/2023_001_02_00.pdf
※5 「宇宙技術戦略の概要(詳細版)」(2024年3月28日宇宙政策委員会)については次を参照。
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai111/sankou1.pdf


※1元=20.9円換算


【2024年4月以降の主要予定】
4月1‐19日 軍縮委員会年次総会(ニューヨーク)
4月2日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:コネチカット州、デラウェア州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州)
4月10日 韓国総選挙の投開票日
4月10日 岸田首相、米国公式訪問
4月10‐11日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
近日  インド太平洋軍司令官の交代式(サミュエル・パパロ海軍大将が就任予定)
   
5月20日 台湾総統就任式
5月31日  シャングリラ会合(~6月2日)シンガポールで開催


 
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クライシスインテリジェンス管理者
https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnauokukj 2024-04-03T11:00:00+09:00 クライシスインテリジェンス管理者 「タウルス」はウクライナへ供与されるのか https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fns2z72c6 2024-04-03T09:00:00+09:00
 英国の巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」の2倍の射程(約500km)を持つドイツの「タウルス」
【画像出典】Wikimediahttps://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/83/Taurus_ILA2006.JPG

 
ドイツのオラフ・ショルツ首相は2024年3月13日、議会において、ウクライナに長距離ミサイル「タウルス」を供与しないと再度明言した。ショルツ首相は「慎重な決断は弱点ではなく、決断はドイツ国民が行うべきだ」と述べた。
 
2023年5月末、ウクライナはNATOで最も強力な長距離ミサイルの1つである「タウルス」の供与をドイツに正式に要請。最初の回答は曖昧であり、その後も一貫して否定されている。
 
2024年に入り、ウクライナ軍は弾薬不足の深刻な問題に直面している。これはドネツク州の重要な要衝であるアウディーイウカ陥落の一因となっており、さらに損失が続く可能性がある。ウクライナがなぜタウルスの供与を求め続けているのか、そしてドイツがこの兵器を拒み続ける理由は何なのか。

 
<高性能ミサイル、タウルス>

タウルスはドイツとスウェーデンが共同開発したミサイルで、最大射程は310マイル(約500km)を超える。これに対し、これまでにウクライナに供与された長距離ミサイルは、英国の「ストーム・シャドウ」とフランスの「SCALP」で最大射程は155マイル(約250km)だ。米国が供与した陸軍戦術ミサイル「ATACMS」は、約99マイル(約160km)である。
 
タウルスの最大射程があれば、ウクライナ軍は味方領内から多くの重要目標の攻撃を行うことができ、性能的にはロシア国内にも到達可能だ。また、発射モードを低空にすれば、ミサイルは高度114フィート(約35m)を維持しながら飛行する。これにより、レーダーに探知されず、ほとんどの防空システムの回避が可能となるのだ。
 
タウルスは、司令部や橋、地下にある重要目標を攻撃するために設計されている。もしウクライナ軍が入手した場合、クリミア半島とロシア国内を結ぶ最重要な補給ルートであるケルチ橋もターゲットとなるだろう。この全長19kmの橋は、2023年7月にウクライナ軍の海上ドローン「シー・ベイビー」の攻撃を受け、一部が破壊された。
 
オスロ大学、ミサイル技術専門家であるファビアン・ホフマン博士は「タウルスは西側のミサイルの中でも特に橋の破壊に適した兵器だ。橋やバンカーなど強固な目標に対して起爆の前にいくつかの層を貫通させる特殊な弾頭を備えており、最大の破壊効果が期待できる。ウクライナ軍がケルチ橋を破壊したいのであれば、タウルスは理想的な兵器である」と説明している。
 
ただし、タウルスはウクライナが保有する戦闘機には対応していない。まもなく配備が予定されているF-16やグリペン戦闘機に搭載することになるだろう。
 

<ショルツ首相の懸念>
2022年2月、ロシアのウクライナ侵略が始まるまで、ドイツは一貫してウクライナへの武器供与を否定していた。しかし、2024年2月時点では、米国に次ぐ軍事支援国となり、支援総額は190億ドル(約2兆8,700億円)に達している。
 
ドイツからの支援が多額であるにもかかわらず、レオパルト戦車や自走榴弾砲などの重要装備の供給は常に遅れており、他の支援国との足並みが揃わない状態が続く。ショルツ首相は、モスクワ攻撃にタウルスが使用される可能性を懸念し、ミサイルの改造によってロシアの中心部を攻撃できないように望んでいると報じられている。
 
首相にとっての最悪のシナリオは、ウクライナがタウルスを使って、ロシア国内の政治機能を攻撃することだ。それにより、戦局が悪化しドイツとロシアが直接対立に発展する可能性を恐れているのだ。
 
ホフマン博士は「ウクライナは西側から供与された兵器を使ってロシア国内を攻撃しないと宣言している。今後、ドイツ政府の方針が変わり、国民の大多数が支持すればタウルスの供与は現実となる。しかし、それが近い将来に実現する可能性は低いだろう」と述べている。
 
※1ドル=151円換算



【参考】
https://kyivindependent.com/taurus-long-range-missile-why-does-ukraine-want-them-and-germany-hesitates/
 
https://breakingdefense.com/2024/03/what-about-taurus-missiles-for-ukraine-the-1-question-germanys-chancellor-hears-on-repeat/

 
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クライシスインテリジェンス管理者
米国、超音速ミサイル開発で中露に後れ https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fng3gtugs 2024-04-02T15:00:00+09:00
中国人民解放軍の超音速ミサイルDF-17 
【画像出典】中国国防省:
http://eng.mod.gov.cn/xb/News_213114/TopStories/_attachment/2019/10/01/4851979_16d8699eb3648519790270.jpeg


極超音速ミサイル開発・配備において米国は中国、ロシアに後れを取っている可能性が高い。特に中国の開発速度は凄まじく、米国を凌いでいるとみられる。国家航空宇宙情報センター(National Air and Space Intelligence Center)のジェフェリー・マコーミック(Jeffrey MacCormick)上級諜報アナリストによると、中国は過去20年の間に極超音速ミサイルの試験、製造を劇的なスピードで進めてきた。この開発は核兵器と通常兵器の両面において進められており、現在、中国は世界有数の極超音速ミサイル保有国となっている。
 
中国軍の持つ最高性能のミサイルは2020年に配備が開始されたDF17である。これは最低でも994マイル(約1,600km)の飛行が可能で、日本、韓国などの周辺国や西太平洋の米軍基地を射程圏内に収めている。また米国防省の報告書によれば核弾頭を搭載しており、さらにはサード・システム(Terminal High Altitude Area Defense System, THAAD System)やSM3といった米軍の防空システムを通さない可能性がある。マコーミック氏は、「中国は大量の極超音速ミサイルの配備に投資しており、『強力で近代化されたロケット部隊』を構築する計画を順調に進めている」と指摘する。
 
一方、ロシアの主要な極超音速ミサイルの1つは、キンジャール(Kinzhal)とよばれるものだ。キンジャールは空中発射型ミサイルで、マッハ10の速度で1,232マイル(約1,985km)を飛行できるとみられている。このミサイルはウクライナ侵略でも使用されているが、攻撃の効果は明らかではない。イギリス国防省は、命中の精度が低い、あるいは迎撃が容易であるという分析結果を公表している。
 
中国、ロシアの脅威の高まりに対して、米国内の議員の中では核弾頭を搭載可能な極超音速ミサイルを配備するべきとの声も上がっている。共和党所属のドン・ベーコン(Don Bacon)下院議員は「ロシアと中国が極超音速ミサイルに核弾頭を搭載するのであれば、なぜ我々はそれをしないのか」と疑問を呈した。しかし国防省のマイケル・ホロウィッツ(Michael C. Horowitz)氏は、ミサイル、爆撃機、潜水艦といった現在の戦力が敵を抑止するのに十分であるという評価に基づき、核弾頭は使用しない方針を示している。
 
米軍も対抗して極超音速攻撃型巡航ミサイル(Hyper Attack Cruise Missile, HACM)や空中発射型即応兵器(Air-Launched Rapid Response Weapon, ARRW)などの極超音速兵器の開発を進めている。しかし直近の実験は失敗が重なっており順調に進んでいるとはいえない。特にARRWは計画が大きく遅れ、計画を軌道に戻す目途が立っていない状況だ。仮に現在のHACM、ARRWの計画が順調に進んだとしても、中国、ロシアには依然として大きく後れを取っているとも指摘されている。
 
極超音速ミサイル技術は、兵器の最新技術の中でも最重要領域の1つであるという見方がある。射程が広範囲に及び、かつ簡単に迎撃できないことから、地上の軍事施設を破壊することも容易となる可能性が高い。中国、ロシアはこの領域での技術開発を急速に推進しており、米国も両国に後れを取ることを避けるべく開発を推し進めている。今後の米国の開発動向に注目していきたい。



【参考】
https://www.washingtontimes.com/news/2024/mar/12/china-now-leads-world-nuclear-and-conventional-hyp/
 
https://nationalinterest.org/blog/buzz/chinas-dangerous-df-17-hypersonic-missile-can-hit-us-bases-and-aircraft-carriers-207934
 
https://www.airforce-technology.com/projects/kinzhal-hypersonic-missile-russia/
 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231220/k10014294281000.html

 
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クライシスインテリジェンス管理者
中国、再利用可能ロケットを打ち上げ予定 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnpvxdjow 2024-04-02T09:00:00+09:00
2021年に行われた長征7号の打ち上げの様子
【画像出典】X:https://twitter.com/shiki_kuroha/status/1439863799926779906/photo/1


 
中国は将来の有人月探査に備えて、2025年と2026年に再利用可能なロケット2機を打ち上げる予定だ。全国人民代表大会の副議員である王偉氏は3月4日、「国営企業の中国航天科技集団(CASC)が、直径4mと5mの再利用可能なロケットをそれぞれ2025年と2026年に初めて打ち上げる計画だ」と、中国の新聞社に語った。
 
現時点ではロケットの詳細は正確には判明していないが、Space Newsによると、直径5mのロケットは長征10号であり、新世代の有人宇宙船「夢舟(むしゅう、Mengzhou)」を打ち上げるために設計されているという。長征10号の基本的なバージョンは地球低軌道への打ち上げに利用されるが、ここでは月探査用のより強力な3段式が想定されている。
 
具体的な月探査のプロセスとしては、搭載される2機のロケットが、乗組員を乗せた有人宇宙船「夢舟」と着陸船「攬月(らんげつ、Lanyue)」を月の周回軌道に打ち上げる見込みである。周回軌道で2機はドッキングし、その後、2人の宇宙飛行士が「攬月」に乗り込み、月に着陸する。そして離脱時に攬月が離陸し、再び夢舟号とドッキングして地球に帰還する、という流れだ。
 
長征10号は、2030年までに宇宙飛行士を月に送り込むという中国の計画の鍵となっている。長征10号の3段式は全長92mで、27トンの貨物を月周回軌道に打ち上げることができる。
 
直径4.0mとされるロケットは、中国宇宙開発委員会の上海航天技術研究院(SAST)が以前に提案したロケットになる可能性がある。このロケットは商用エンジンメーカーの九州雲建が開発したエンジンを使用する予定で、最大6,500kgの貨物を高度700kmの太陽同期軌道(SSO)に打ち上げられる。
 
現在、複数の中国企業が再利用可能なロケットを開発しているが、国営のCASCの新しいロケットは、中国のさまざまな企業と競合することで「中国の宇宙技術へのアクセスの選択肢を大幅に増やす」とSpace Newsは報じている。これは中国の国家戦略にも合致しており、再利用可能なロケットを開発し商業エコシステムを支援するというものだ。その具体的な動きとしてCASC傘下の中国空間技術研究院(CAST)は、ロケットエンジンの試験台など大規模な試験施設の公開と他企業との共有を強化するとしている。また、商業用打ち上げ場の建設にも参加し、商業用の打ち上げを支援するその他のインフラも提供すると王偉氏は述べた。
 
来年の打ち上げに先立ち、CASCは「2023年に垂直離着陸ホバリング試験を完了し、再利用可能なロケットにおける重要な技術的進歩を達成した」と発表。国営メディアの科技日報の翻訳記事によると、CASCの代表者は「ロケットプロジェクトの全体的な進捗は非常に順調だ」と述べている。



【参考】
https://spacenews.com/china-to-debut-large-reusable-rockets-in-2025-and-2026/
 
https://www.space.com/china-reusable-rockets-human-moon-missions
 
https://universemagazine.com/en/china-to-get-two-reusable-rockets/

 
 
 
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クライシスインテリジェンス管理者
米空軍、自動車製造方式をドローンに応用 https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fnhgs92en 2024-04-01T09:00:00+09:00
「プラットフォーム共有」によって製造されたXQ-67A無人航空機 
【画像出典】米国防総省:
https://media.defense.gov/2024/Feb/29/2003405059/1200/1200/0/240229-F-F3963-1003.JPG


 
米軍の空軍研究所(Air Force Research Laboratory)は、自動車製造の技術を自律型ドローンの大量生産に応用させることを計画している。
 
空軍研究所がドローン製造への導入を目指しているのは「プラットフォーム共有」とよばれる技術である。これは自動車の骨格にあたる構造を、複数の車両のモデルで共有し、その上に載せる部品や性能の設計をモデルごとに行うという方法である。自動車の生産プロセスでは一般的に採用されており、時間や費用の節約、安全性の向上、部品のサプライチェーン管理の簡素化などに役立っている。
 
米空軍は現在、協調型戦闘機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)と呼ばれる自律飛行が可能な無人戦闘機の開発に力を入れている。攻撃、偵察、電子戦といった幅広い分野での活動が期待されており、将来的にはF-35などの次世代戦闘機の僚機として導入することも考えられる。この計画を実現するためには、大量の無人機を安価に生産できる仕組みを整えなければならないため、プラットフォーム共有の導入が検討されているのだ。
 
これまでの実験により、無人航空機が有人機とともに編隊を組み、長距離飛行する技術はすでに確立されつつある。米軍は2010年代後半から無人戦闘機ヴァルキリー(Valkyrie)の開発を進めており、2019年に初飛行を行い、2021年には内部の兵器格納庫から小型無人航空機ALTIUS-600の射出にも成功している。また、無人システムの実戦配備の計画であるスカイボーグ・プロジェクト(Skyborg Project)が、クラトス(Kratos)社、ボーイング(Boeing)社、ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(General Atomics Aeronautical Systems)社によって進められている。
 
現在、この無人飛行技術を実戦に利用できるよう、製造プロセスの改善に取り組んでいるところだ。空軍研究所は他のモデルのドローンとの間で共有可能なプラットフォームの大きさ、設計などの検討を進め、2022年には共通プラットフォームから製造される最初の航空機XQ-67をジェネラル・アトミックス社に発注した。XQ-67は諜報、監視などを想定した、センサーを搭載した無人飛行機であり、有人戦闘機と編隊を組んで飛行することが可能である。現時点では遠隔での操作が必要であり、自律飛行に向けての開発が並行して進められている。
 
XQ-67は現時点で1機しか製造されておらず、今後の製造コストや価格は不透明であり、高価になる可能性も指摘されている。しかし、プラットフォーム共有の仕組みはXQ-67のみならず、類似のドローンや今後の最新型の開発にも利用可能だ。他のモデルのドローンや将来的に開発されるドローンがXQ-67と共通の基礎構造を利用できれば、開発過程を簡素化し、かつ同じ設計での製造数量を増やすことで1機当たりの費用を抑えられる。
 
戦闘の最前線における省人化に取り組んでいる米空軍にとって、無人機による代替は特に重要な問題である。自律飛行技術の開発のみならず、製造工程の整備によるコストカット、効率化は今後無人機の配備を進めるうえでの1つの鍵となるだろう。



【参考】
https://www.defensenews.com/air/2024/03/06/carmaker-model-may-yield-cheaper-drone-wingmen-air-force-research-lab/
 
https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/3694599/afrls-xq-67a-makes-1st-successful-flight/
 
https://www.aerospace-technology.com/projects/cobalt-50-valkyrie-aircraft/
 
https://www.airandspaceforces.com/wildly-successful-skyborg-program-of-record-developing-st/
 
https://www.businessinsider.jp/post-232556

 
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クライシスインテリジェンス管理者
Monthly Night Vision Report ~No.6 赤外線イメージングの基礎知識1:赤外線とは~ https://nsbt-japan.com/u/admin01/j1ti2fntspjrua 2024-03-29T15:00:00+09:00 NSBT Japan アナリスト 難波 久男
 
1. 赤外線とは
赤外線とは、可視光線より波長が長く、マイクロ波より波長が短い電磁波です。波長としては0.78μm近辺から1,000μm近辺までです。可視光線より長いため肉眼では見えない領域です。
 
すべての物体は、絶対零度より高い温度であれば赤外線を放射します。
 
2. プランクの放射則
赤外線の特性を考える場合、物体を代表するモデルとして完全黒体をよく使います。完全黒体は、すべての光を吸収する理想物体ですが、一方で同じ温度の他の物体と比較すると最も多く赤外線を放射します。「プランクの放射則」は、完全黒体の温度と放射する光の波長との関係を示したものです。図1に完全黒体温度が3500Kから5500Kの場合の放射スペクトルを示します。
 
温度が高くなるにつれてスペクトルのピーク波長が短くなります。太陽光についていえば、太陽の表面温度は約5800Kなのでピーク波長は約500nmとなります。これは可視光のほぼ中央に位置します。人間の眼が感じる可視光領域は、太陽光のピーク波長近傍あります。


3. ウィーンの変位則
「ウィーンの変位則」は、完全黒体から放射される電磁波のピーク波長と完全黒体の温度との関係を示した法則です。温度が高くなるにつれピーク波長が反比例の関係で短くなります。常温近辺の300Kではピーク波長は10μm付近にあり、500K~1000Kの高温では3~5μm付近のピークがあります。このような特性から常温付近の物体(人間、船舶、車両等)の観測には10μmに感度がある赤外線センサが有利になり、車両や航空機のエンジンの観測には3~5μmに感度がある赤外線センサが有利になります。

 

 
4. 赤外線波長帯
波長帯の名称は、各種学会や団体により異なる場合があります。このレポートでは、光学、フォトニクス、画像工学の分野における知識の交換、収集、普及を目的とする非営利の国際的な学会である国際光工学会(SPIE)が発行している文献 [2] を引用します。赤外線は、近赤外線(0.75μm~3.0μm)、中赤外(3.0μm~6.0μm)、遠赤外(6.0μm~15μm)の3つの領域に分類されます。
 
5. 大気の窓
地球の大気中には、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の様々な分子が存在します。それらの分子は様々な波長の光を吸収します。そのため特定の波長域の光のみが大気を透過し伝搬することになります。図3は、地上付近の大気の透過率を示したグラフです。横軸が光の波長で、縦軸が透過率になっています。薄紫の領域が光を透過する波長域を示しています。

 

 
【出典】
[1]https://www.heat-tech.biz/products-epl/eph-gj/eph-gj-/
[2]Arnold Daniels,“Field Guide to Infrared Systems, Detectors, and FPAs”
[3]https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E5%A4%A7%E6%B0%97%E3%81%AE%E7%AA%93_%E5%A4%A7%E6%B0%97%E3%81%AE%E7%AA%93%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

 
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